UBSがMicron Technologyに対する投資判断「買い」と目標株価1625ドルを維持している。市場の関心は株価の上昇余地そのものよりも、AI向け需要の拡大が、メモリ半導体業界で繰り返されてきた需給サイクルの振れ幅をどこまで小さくできるかに移っている。
Decriptoが18日付で報じたところによると、UBSはMicronに対する強気スタンスを継続した。目標株価1625ドルは、18日序盤の株価970.67ドルに対し、約67%の上昇余地に相当する。
もっとも、この目標株価は18日に新たに示されたものではない。UBSは5月26日、ティモシー・アルクリ氏のリポートで、Micronの目標株価を従来の535ドルから1625ドルへ引き上げていた。
UBSが重視するのは、AIデータセンターの拡大に伴うメモリ需要の質的変化だ。従来のメモリ市場では、需給逼迫に伴う価格上昇を受けて各社が生産能力を増強し、その後に供給過剰へ転じて価格と収益性が急落する局面が繰り返されてきた。
これに対し、AIサーバー市場では構図が変わる可能性がある。AIの演算性能が高まるほど、プロセッサとメモリの間でデータを高速にやり取りする能力の重要性が増すためだ。特に高帯域幅メモリ(HBM)や高性能サーバー向けメモリの需要拡大により、容量だけでなく帯域幅や性能がAIインフラの競争力を左右する要素になっている。
強気見通しを支える材料として、UBSは長期供給契約の拡大も挙げる。業界全体のDDR出荷量の最大30%が、顧客のコミットメントや一部固定価格を含む契約で押さえられる可能性があると推計した。超大型データセンター事業者も、サーバー向けDDR5の約60〜70%を長期契約で確保しているとされる。
こうした契約が広がれば、メモリメーカーは将来需要を見通しやすくなり、需要に見合った生産計画を立てやすくなる。顧客側にとっても、需給逼迫時に必要な数量を安定的に確保しやすい。UBSは、この構造がメモリ市況の変動を従来より和らげる可能性があるとみている。
もっとも、メモリ業界のサイクルそのものが消えるわけではない。メーカー各社がAI需要を過度に楽観して設備投資を拡大したり、AIインフラ投資が想定以上に早く鈍化したりすれば、再び供給過剰に陥るリスクは残る。
UBSの長期的な強気シナリオも、こうしたリスクを織り込んだ上でのものだ。UBSは、Micronが2029年も年間の1株当たり利益(EPS)100ドル超を維持できると予想。目標株価1625ドルは、この長期利益予想に株価収益率(PER)約15倍を適用し、さらに1年分を割り引いて算出したとしている。
足元の業績も、AI向けメモリ需要の強さを裏付けた。Micronの会計年度第3四半期の売上高は414億6000万ドルで、過去最高を更新した。前四半期の238億6000万ドル、前年同期の93億ドルから大きく伸びた。
同四半期のGAAPベース純利益は282億4000万ドル、営業キャッシュフローは253億9000万ドルだった。EPSはGAAPベースで24.67ドル、調整後で25.11ドルとしている。
第4四半期の見通しも強い。Micronは、売上高約500億ドル、売上総利益率約86%、調整後EPS約31ドルを見込む。
HBM4の供給も本格化している。Micronは、先行顧客向けにHBM4を量産出荷しており、追加顧客向けにも認証用サンプルを供給していると発表した。2026年分のHBM供給はすべて割り当て済みだとしている。
一方、株価がUBSの目標株価にすぐ追随したわけではない。Micron株は18日序盤、4.06%安の970.67ドルとなった。米国債利回りの上昇を受け、ハイテク株やAI関連株全般で投資家心理が悪化したことが背景とみられる。SanDisk、NVIDIA、Marvellなど主要半導体株も軟調だった。
金利上昇は将来利益の現在価値を押し下げるため、ここまで大きく上昇してきたAI・半導体関連株のバリュエーションには逆風となる。
Micronのトークン化株式であるMUBも連れ安となった。ただ、トークン化株式は取引時間や流動性、気配値の違いから、ナスダック上場の現物株と一時的に価格が乖離する場合がある。
最終的にMicron株の方向感を左右するのは、AIがメモリ業界の従来の需給サイクルを本当に変えられるかどうかだ。HBM4やサーバー向けDDR5の需要拡大に加え、長期供給契約の浸透が進めば、Micronは過去より安定した収益構造を築ける可能性がある。逆に、AI投資の減速と大規模な能力増強が重なれば、メモリ価格の下落を伴う従来型のサイクルが再び表面化する余地も残る。