HW3からHW4への換装は不可能ではない可能性を示した事例だ。写真=Shutterstock

Teslaの旧型自動運転コンピュータ「HW3」を最新の「HW4」に載せ替えた個人事例が明らかになり、既存車向けにTeslaが公式アップグレードを実施するのかどうかに注目が集まっている。論点は、技術的な実現性に加え、費用負担と責任の所在にある。

電気自動車メディアElectrekによると、ポーランドのTeslaオーナーであるミハウ・ガフィンスキは18日、2022年式のModel 3に搭載されたHW3をHW4へ交換する作業を行った。ガフィンスキは、Tesla車両とAndroid機能を連携させる事業「Tesla Android」を運営している。

ガフィンスキは換装後の状況を公開し、作業は想定していたほど難しくなかったと説明した。必要だったのは「軽度のECUハッキング」程度で、ハードウェア面でもエポキシやケーブルタイを使って対応したとしている。

もっとも、現時点ですべての機能が正常に動作しているわけではない。ガフィンスキは、完全動作には追加作業が必要だと明らかにした。公開された資料も、サービスモードの画面や作業工程の写真が中心で、実走行の映像は示されていない。

この事例が関心を集める背景には、TeslaのFSDを巡るハードウェア更新の問題がある。Teslaは2016年以降に生産した全車両について、将来の完全自動運転に必要なハードウェアを備えていると説明してきた。ただ、開発が進むにつれ、初期のHW1だけでなくHW3も将来的な完全自動運転の実現には不十分となる可能性が指摘されている。

Teslaはこれまで、FSDを購入したオーナー向けにHW3へのアップグレードを無償で提供してきた。一方、HW3からHW4への移行は、コンピュータ本体の交換だけでは完結しない。カメラなど関連部品の交換も必要で、作業の難度は高い。対象車両が数百万台規模に及ぶことから、部品調達や人員確保の負担も大きいというのがTeslaの見解だ。

イーロン・マスクCEOは4月、主要都市に「マイクロファクトリー」を設置し、HW交換を大規模に進める構想に言及した。ただ、その後の具体的な実行計画や進捗は公表されていない。

こうした中、ガフィンスキは、個人レベルでもHW3からHW4への換装が可能であることを確認できたとして、Teslaもより早い段階で同様のアップグレードを実施できたはずだとの見方を示した。

ただし、個人が1台の車両を改造することと、Teslaが数百万台を対象に公式アップグレードを提供することの間には大きな差がある。メーカーが正式にハードウェア交換を行うには、部品供給、認証、安全性の検証、ソフトウェア互換性、アフターサービスなど、複数の課題を解決しなければならない。

論点は最終的に、費用負担と責任の所在に集約される。ガフィンスキは、TeslaがHW4アップグレードを有償オプションとして提供する可能性があるとみている。一方、FSDライセンスを購入したオーナーの間では、無償アップグレードを求める声も根強い。Teslaが過去に、完全自動運転を支えるハードウェアを搭載しているとして車両を販売してきたことが、その根拠となっている。

FSDの性能を巡る法的紛争も続いている。一部オーナーは少額訴訟を起こしており、地域によっては集団訴訟も進行中とされる。Teslaは関連訴訟で、オーナー側に忍耐を求める姿勢を示してきた。

特に、Teslaがかつて示していたレベル5相当の完全自動運転は、現時点でどの車両でも実現していない。現在提供されているFSDも、運転者による継続的な監視と介入を前提とする段階にとどまっている。

TeslaのFSD販売のあり方も変化している。現在は買い切り型よりも月額サブスクリプションでの提供に軸足を移している。将来の性能を前提に長期販売するのではなく、現時点で提供できる機能に合わせて商品設計を見直す動きといえる。

また、既存車両のFSDライセンスを新車へ移す施策も、現在は継続的な制度としては運用されていない。このため、HW3車両を保有する既存オーナーの不満がさらに強まる可能性もある。

今回の個人換装については、最終的に全機能を動作させられるかどうか、なお追加検証が必要だ。ただ、個人レベルで「HW3→HW4」の換装可能性が示されたことで、Teslaが既存のFSD購入者にどのようなハードウェアアップグレード策を提示するのかを巡る議論は一段と強まりそうだ。

今後の焦点は、TeslaがHW3搭載車の限界を認めた上で、公式のHW4アップグレードプログラムを導入するのかどうかにある。導入する場合、費用を誰が負担するのかも避けて通れない。FSDを巡る従来の説明と実際の性能との乖離が広がるほど、このハードウェア更新問題はTeslaにとって大きなリスクとして浮上する可能性がある。

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