韓国の個人投資家が、国内株の調整局面で米国株への資金シフトを強めている。7月の米国株買い越し額は約45億ドルに達し、資金はAI半導体関連やレバレッジETFに集中した。なかでもSK hynixの米国預託証券(ADR)には約8億4000万ドルが流入し、韓国上場株を約10%上回る価格で取引される場面もあった。
米CNBCが17日、こうした動きを報じた。韓国投資家による7月の米国株純買い越しは約45億ドルで、国内株から流出した資金の受け皿として米国市場へのシフトが鮮明になった。
ただ、買いの中心は新たな投資テーマではなかった。韓国預託決済院の集計によると、7月の米国株純買い越しのうち約8億4000万ドルがSK hynixのADRに向かった。SK hynix ADRは、韓国投資家による米国証券の純買い越し額で2位だった。韓国市場で同社株を直接売買できるにもかかわらず、米国上場のADRに資金が集中した格好だ。
その過程で価格のゆがみも生じた。アーカディアン・アセット・マネジメントのシニア・バイスプレジデント、オーウェン・ラモント氏は、SK hynix ADRが最近、韓国上場の現物株を約10%上回る水準で取引されたと指摘した。同氏は韓国投資家によるSK hynix ADRの買いについて「完全に異常だ」とし、「韓国投資家が米国で韓国株のADRを買う理由はない」と語った。
ラモント氏は、こうした価格差はまれで、過度な投機のシグナルになり得るとみる。「バブルの症状」と表現し、ドットコム・ブーム期には台湾企業やインド企業でも同様のゆがみがみられたと説明した。
一方、米国株への資金流入が、そのままリスク選好の後退を意味するわけではないとの見方もある。今月、韓国個人投資家の人気米国株10銘柄のうち7位は、レバレッジ型のProShares Ultra QQQ ETFだった。7月の純買い越し上位10銘柄のうち4銘柄もレバレッジ商品が占めた。
最も買われたのは、半導体指数の日次リターンの3倍連動を目指すDirexion Daily Semiconductor Bull 3X Shares ETF(SOXL)だった。ProShares UltraPro QQQとProShares Ultra QQQも、それぞれ4位と6位に入った。
レイリアント・グローバル・アドバイザーズのリサーチ責任者、フィリップ・ウール氏は「買われている銘柄をみると、国内市場で売られたものと同じAIハードウェアのテーマに連動するものが大半だ」と述べた。投資先の市場は変わっても、賭けているテーマ自体は大きく変わっていないという見立てだ。
フィボナッチ資産運用の代表取締役、ユン・ジョンイン氏も同様の見方を示した。韓国の半導体株やレバレッジETFで損失を被った一部投資家が、より高い質や流動性を求めて米国のAI関連株に移った可能性があるという。同氏は「AIテーマへのエクスポージャーを減らすのではなく、同じ見方を表現する市場だけを変えているのかもしれない」と語った。
韓国株市場では同時期、個人資金の流出と信用縮小が同時に進んだ。韓国取引所のデータによると、個人投資家は先週の大半で国内株を純売り越した。一方、海外投資家は純買い越しに転じた。主要指数が強気相場入りしている局面でも、個人の売り越しが目立った。
信用融資残高も急減した。韓国金融投資協会によると、6月末に約37兆ウォンだった国内株の信用融資残高は、今月初めに27兆ウォンまで減少し、年初来の最低水準を記録した。国内株はこれに先立ち、半導体株やレバレッジ商品への個人資金流入を背景に急騰した後、大きく売られ、今月に入って持ち直している。
もっとも、韓国個人の資金流入が米国市場全体に与える影響は限定的との見方が優勢だ。ウール氏は、韓国の個人投資家は国内市場では存在感が大きい一方、米国株市場は機関投資家やプロ投資家の比重が高く、韓国資金の流入は市場全体の売買規模に比べれば大きくないと指摘した。
ただし、個人投資家に人気の高い特定銘柄やテーマでは、変動性を押し上げる可能性がある。ラモント氏は、2024年末に韓国投資家が米国の量子コンピューティング関連株に集中した事例に触れ、韓国や香港、米国で広がるレバレッジETFの増加が「ボラティリティを加え、市場変動を拡大し得る」と述べた。韓国資金の米国シフトは、市場全体の方向感よりも、特定テーマや値動きの大きい商品のほうで先に影響が表れる可能性がある。