米通貨監督庁(OCC)は17日、トランプ一族と関係する暗号資産企業World Liberty Financialによる国家信託銀行(National Trust Bank)の認可申請を条件付きで承認した。米ドル建てステーブルコイン「USD1」の発行や暗号資産カストディ事業の展開に向けた動きが前進する一方、利益相反を巡る政治的な批判は一段と強まっている。
Cointelegraphの報道によると、同社は所定の規制・政策要件を満たせば、「World Liberty Trust Company, National Association」の名義で営業できるようになる。
今回の承認により、同社は信託銀行の枠組みを活用してステーブルコイン発行とデジタル資産の保管事業を進める道筋を得た。申請書では、米ドル建てステーブルコインの発行に加え、自社トークン「USD1」に関連するデジタル資産の保管計画も示している。
一方で、承認手続きを巡っては利益相反への批判が広がっている。ドナルド・トランプ米大統領と3人の息子は同社と関係があり、World LibertyのWebサイトには、トランプ一族の関連法人が同社株式の38%を保有していると記載されている。OCCを率いるジョナサン・グールドも、2025年にトランプ氏が指名した人物だ。
OCCは今回の審査について、監督官と職員が申請処理の全過程で法的義務と倫理的責任を一貫して順守したと説明した。グールドもこれに先立ち、上院議員エリザベス・ウォーレンの書簡に対し、当該申請は政治とは無関係であり、超党派の手続きに基づいて審査すると述べていた。
ただ、民主党は承認直後から反発を強めている。ウォーレン議員は、前例のない腐敗を防ぐための法案を提出したと明らかにし、OCCの決定を「米金融システムが目にした最も露骨な私益追求」と批判した。ウォーレン議員を含む上院議員10人は、承認後に「大統領の銀行腐敗終結法」を打ち出している。
同法案は、大統領に関わる利害関係が銀行認可審査に介入する事態の防止を主眼としている。
トランプ政権下では、暗号資産企業への信託銀行認可が相次いでいる。OCCはグールド体制の下、米国内での事業拡大を進める暗号資産企業による信託認可申請を複数承認、または条件付きで承認してきた。
昨年12月には、GENIUSステーブルコイン法案の可決を受け、Circle、Ripple Labs、Crypto.com、Coinbaseの申請も承認したという。
資金の流れや対外連携も引き続き争点となっている。米議員らは、外国系資金がトランプ氏を通じて米国の政策に影響を及ぼす可能性について調査を求めている。
報道では、アラブ首長国連邦の国家安全保障顧問シェイク・タフヌーン・ビン・ザイド・アル・ナヒヤンの支援を受けるアブダビの投資会社が、2025年1月にWorld Liberty株の49%を5億ドル(約750億円)で取得したとされる。
また、別のアラブ首長国連邦の法人MGXは、World Libertyのステーブルコイン「USD1」を活用して、暗号資産取引所Binanceに20億ドル(約3000億円)を投資した。その後、トランプ氏はBinanceの前最高経営責任者(CEO)チャンポン・ジャオを恩赦した。
こうした取引の構図は、World Libertyの事業拡大と政治的論争を切り分けて見ることの難しさを改めて示している。
ホワイトハウスはこれまで、トランプ氏の投資を巡って利益相反には当たらないとの立場を繰り返してきた。今回の条件付き承認でWorld Libertyの規制下での事業展開は一歩前進したが、今後は規制要件の充足に加え、政治側による調査要求も不確定要因として残りそうだ。