ドナルド・トランプ米大統領が後押しする暗号資産企業World Liberty Financial(WLFI)が、米政府から制裁や安全保障上の懸念を受ける中国系AI企業のモデルを扱う香港のAIプラットフォームと関係を持っていたことが明らかになり、波紋を広げている。トランプ一族の暗号資産事業と中国AI技術、国家安全保障が交錯する構図となっており、利益相反を疑問視する声も出ている。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが17日(現地時間)に報じたところによると、香港拠点のAIプラットフォーム「Worldclo」は、約90種類のAIモデルに接続するルーティングサービスを運営している。このうち43モデルは、Alibaba、Baidu、Z.ai、DeepSeek、Moonshotなど中国企業が開発したものだという。
Worldcloはこのほか、OpenAIやAnthropicなど米企業のモデルも提供している。
今回、注目を集めているのは決済面での連携だ。Worldcloは、WLFIが発行するドル連動型ステーブルコイン「USD1」をサービスの決済手段として採用している。
USD1は米国債などを含む資産を準備金として保有しており、トランプ一族はその準備資産から生じる利息収入の一部を受け取る権利を持つ。USD1の利用拡大が、WLFIの事業成長につながる可能性があるとの見方が出ている。
WLFIは最近、USD1を中核とする全米規模の銀行免許について予備承認を得たとされる。さらに、トークン販売を通じてトランプ一族に14億ドル超(約2100億円)をもたらしたと伝えられており、暗号資産関連の収益は計23億ドル(約3450億円)に上るとの推計もある。
論点の1つは、Worldcloが提供する中国AIモデルの中に、米政府の制裁対象や安全保障上の懸念先が含まれている点だ。米国防総省はAlibabaとBaiduを、中国軍と連携する企業に指定している。
また、Z.aiは米商務省の取引制限リストに掲載されている。米政府は、高度なAI技術を通じて同社が中国の軍事能力を強化する可能性があるとみている。
DeepSeekとMoonshotについても、米国では安全保障上の懸念先として名前が挙がっている。トランプ政権関係者は過去、両社が米競合企業の知的財産を活用してAIシステムを構築した疑いを提起したことがある。
これに対し、Moonshotは疑惑を否定している。
人的な関係も浮上している。WLFIで成長部門を統括するライアン・ファング氏は、過去にWorldcloのアドバイザーを務めていたという。
Worldcloは、この役割について、USD1の採用拡大とAIサービスのアクセシビリティ向上に関する助言に限られていたと説明した。ドナルド・トランプ・ジュニア氏とエリック・トランプ氏も、過去にソーシャルメディアでWorldcloを宣伝したとされる。
安全保障面での懸念も指摘されている。米シンクタンク「新アメリカ安全保障センター(CNAS)」のシニア研究員ダニエル・レムラー氏は、Worldclo経由で中国AIモデルを利用した場合、利用者情報が中国政府の監視にさらされる可能性があるほか、悪意あるコードによってAIエージェントが乗っ取られるリスクもあると指摘した。
Worldclo自身も、利用者が入力した情報が、プラットフォーム上で提供されるモデルの開発企業に伝達される可能性があると案内している。
Worldcloは、利用者が1万人を超え、1日当たり5000万件以上のリクエストを処理していると説明している。中国AIモデルの相対的な低コストが、利用者拡大の背景にあるとみられる。
もっとも、米国内の個人や企業が中国AIモデルを利用する行為自体が、現時点で一律に違法とされているわけではない。
当事者はいずれも利益相反の見方を否定している。WLFIはWorldcloが独立した企業だと主張し、Worldcloも、多様なAIモデルを提供していることは各開発企業への支持を意味しないとの立場を示した。
ホワイトハウスも、両社の関係に利益相反はないとし、トランプ大統領は米国民の利益のために行動していると強調した。
一方、外部からは批判的な見方も出ている。ジョージタウン大学「安全保障・新興技術センター」の研究員サム・ブレスニック氏は、米政府が中国AIの台頭と安全保障上の脅威への対応を進める一方で、Worldcloを通じて中国AIツールの利用から収益が生まれる構図は矛盾して見える可能性があると指摘した。
今回の論争は、トランプ一族の暗号資産事業がステーブルコイン、銀行業、AIプラットフォーム決済へと広がる過程で、中国AI技術への依存、国家安全保障、利益相反という複数の問題を改めて浮き彫りにした。