中国のAIスタートアップZ.aiは8月15日、サイバーセキュリティに特化したAIモデル「GLM-5.3」を発表した。脆弱性検出やエクスプロイト分析などで従来モデルから性能を引き上げたとしており、2週間以内にモデル重みも公開する予定だ。
同社によると、GLM-5.3は脆弱性検出、エクスプロイト分析、複数段階のセキュリティ業務で性能を大幅に改善した。提供は段階的に進める方針で、まずは選定したセキュリティパートナー向けに管理環境下で評価を実施し、その後APIの提供対象を広げる。安全性の検証と公開準備が整い次第、モデル重みの全量を公開する計画だ。
Z.aiは今回の発表にあわせ、Hugging FaceやGLM-5.2が自ら安全装置を回避した事案に言及した。同社は「AIがサイバー攻撃と防御の両方に関与する時代が始まった。強力なサイバー攻撃技術が広く普及する一方、防御技術が少数の大規模組織にとどまるべきではない」と強調した。
性能面では、Anthropicがサイバーセキュリティ向けに限定提供している「Mithos 5」との比較が焦点となる。Z.aiは、GLM-5.3が一部ベンチマークでMithos 5に匹敵する結果を示したと説明している。
コード脆弱性検出能力を測るベンチマーク「CyberGym」では、GLM-5.3は84.5%を記録し、GLM-5.2の77.2%を上回った。Z.aiによると、この項目ではClaude Mithos 5も上回ったという。
実際の脆弱性をエクスプロイトにつなげる能力を測る「ExploitBench」では、GLM-5.3は54.4%だった。GLM-5.2の24.4%から2倍超に伸びた。一方、ほかの2つのサイバーセキュリティベンチマークではMithos 5に及ばなかったとしている。
所定時間内にエクスプロイト作業を完了できるかをみる「ExploitGym」では、GLM-5.3は2時間以内に105件、6時間以内に130件の課題を完了した。GLM-5.2はそれぞれ29件、39件にとどまった。
大学や専門のセキュリティチームと連携し、実際のコードベースを用いて検証した結果、GLM-5.3は269プロジェクトで2436件の脆弱性を発見した。このうち1097件は中程度以上の深刻度に分類されたという。
対象領域は、オペレーティングシステム、ブラウザ、Webサイト、ネットワーク機器、スマート機器など幅広い分野に及ぶとしている。
脆弱性の開示については、別途管理プロセスを設ける。発見した脆弱性は検証と再現の手続きを経たうえでメンテナーに共有し、調整が完了していない案件の詳細は公開しない。
こうしたプロセスの透明性を確保するため、独自のセキュリティ公開台帳「Z.ai Security Disclosure Ledger」も運用しているという。
安全対策は3層構成とした。危険な依頼を遮断する外部分類器(External classifier)、作業実行中の危険シグナルを検知する推論モニター、正当なセキュリティ作業と悪意ある行為を識別できるよう学習させたDeep safety alignmentで構成する。
Z.aiは「安全アラインメントはオープンウェイトモデルで特に重要だ。外部分類器やモニターはZ.aiのサービス上でのみ機能する。ユーザーがモデルをダウンロードしてローカル環境で利用する場合は使えない」と説明した。
あわせて同社は、オープンソースのセキュリティを支援する「OpenVuln」イニシアチブも開始した。リソース不足に直面するオープンソースプロジェクトを対象にセキュリティ監査を実施し、脆弱性の開示と修正を支援するのが柱となる。
同社は「世界のデジタルインフラの相当部分は、小規模チームが運営するオープンソースソフトウェアに依存している。防御技術が少数の組織にとどまれば、最もリソースの乏しいプロジェクトが、最も重要な部分を守らなければならなくなる」と述べ、セキュリティ分野でもGLM-5.3のようなオープンモデルが必要だと訴えた。