Buzzvilのイ・グァヌ代表 写真=Buzzvil

Buzzvilのイ・グァヌ代表は、AIトランスフォーメーション(AX)を進めるうえで、AIツールの導入だけでは不十分であり、職務や業務プロセス、組織のあり方まで見直す必要があるとの考えを示した。個人の生産性向上にとどまらず、組織全体のワークフローをAI前提で再設計することが重要だという。

イ代表は「AI導入によって個人の生産性が大きく高まることは確認できた。ただし、組織の生産性を引き上げるには、コンベアベルトを組み直すように、ワークフローそのものを再設計しなければならない」と述べた。

BuzzvilがAXを加速させる背景には、事業の変化がある。同社はこれまでリワード広告事業を展開してきたが、現在は利用者の特性に応じて広告コンテンツやミッション、報酬を変えて提供する「インタラクションAIエージェント」へと事業領域を広げている。イ代表は、こうした製品を開発するには、組織自体がAIエージェントと直接向き合いながら機能する必要があると説明した。

AXの第1段階として同社が取り組んだのは、社員がAIを十分に活用できる環境整備だ。職種ごとに必要なAIツールを、種類や利用量の制限なく使えるようにし、全社員がトークン使用量を確認できるモニタリングダッシュボードも整備した。

同社は年初、全社のトークン使用量を5倍に引き上げる目標を掲げたが、上半期の時点で使用量はすでに10倍に達した。資金や人員が限られるスタートアップにとって、AI利用を意図的に増やすのは小さくない投資で、財務部門からはコスト急増を懸念する声も上がったという。

それでもイ代表は「自分の脳より優れた脳を隣に置いて働くと考えれば、そこに費用を惜しむ理由はない。私たちにとっては死活問題だった」と振り返る。

同社はまずAIの利用を広げ、その後に効果が確認できた領域を見極めて全社展開する方針を採った。イ代表は「まず十分に使ってこそ、その後に最適化できる」とし、有効性が確認された活用事例の横展開に注力したと説明した。

こうした取り組みは、具体的な成果にもつながっている。デザイン部門のコードへの貢献件数は、2026年1〜3月期の10件から4〜6月期には177件へ増加した。これまで1日以上かかっていたUX関連の一部作業は、約30分まで短縮できたという。

コスト削減の事例もある。Buzzvilは約12年にわたり利用してきた海外製の顧客関係管理(CRM)ソリューションを、自社システムに置き換えた。開発者1人がAIを活用し、約2週間で代替システムを開発。営業部門と品質検証(QA)、テストを経て切り替えた結果、年間約1億ウォンの利用料削減につながった。

一方で、こうした成果を受けて他部門でも外部SaaSの内製化を試みる動きが出たものの、同社はこれに一定の歯止めをかけた。内製化には保守負担や継続運用の問題も伴うためだ。

AIは既存事業の高度化にも活用している。開発リソース不足から長く大きな変化を加えられていなかった広告商品について、ハッカソンなどを通じて改善を進めた結果、該当カテゴリーの売上は2025年10〜12月期に比べ、2026年4〜6月期に約170%増加した。

イ代表が次の段階として挙げるのは、組織全体の生産性向上だ。個々の業務スピードを上げるだけではなく、AIに合わせて職務や業務プロセスそのものを組み替える必要があるとみている。

例えばデザイン部門では、成果物を作って開発者に渡す従来型の分業から脱し、企画とコーディングまで自ら担う組織へと再設計した。全社データについても、誰もが直接照会・分析できるようにしたことで、役割が縮小したデータ分析人材は別製品を担当するプロダクトマネジャー(PM)へ転換したという。

この過程で同社が重視しているのは、人員削減ではなく社員一人ひとりの能力拡張だ。イ代表は1対1の面談で「あなたの職業は6カ月後にはなくなるかもしれない」と率直に伝えつつ、AI時代に競争力を持てるよう、役割をどの方向に広げるべきかを本人と一緒に考えるとしている。

イ代表は「消える可能性のあるポジションにいるメンバーが成長し、競争力を持てるようにするのも代表の役割だと思う」と話す。実際にBuzzvilでは、非開発職から開発者へ転じた社員が5人以上いるという。

AI活用を全社に広げる取り組みも、社員主導で進んでいる。社員が自発的に立ち上げた「AIコミッティー」は、非開発職向けの初期活用環境の整備を支援し、最新の活用事例を共有している。

社内ハッカソンでは非開発職の参加比率が約40%に達し、会社業務とは直接関係のない個人のトイプロジェクトについてもAI利用費を支援している。

こうした方針は、Buzzvilが創業初期から重視してきた「セルフリーダー」の文化にもつながる。会社に必要なスキルだけを伸ばすのではなく、社員一人ひとりが自律的な人材として成長することを重視しているためだ。

創業を目指す社員に対し、イ代表が自ら事業アイデアの相談に乗ったり投資したりするのも、同じ文脈にあるという。実際、Buzzvil出身の起業家は、会社員コミュニティ「Blind」、アラームアプリ「Alarmy」、ブランドアグリゲーター「NextChapter」、Coupangの価格比較サービス「Polcent」などを立ち上げている。

イ代表は「今年上半期は開発者が1人も転職しなかった。創業以来初めてだ」と明らかにした。AIツールを制限なく使え、自ら業務の進め方を実験できる環境が、AI転換期にある開発者にとって魅力として機能した結果だとみている。

今後については、職種間の境界がさらに薄れると展望する。イ代表は「AIツールを使いこなす熟達度が、拡張された専門性になる」としたうえで、「広く知るか深く知るかのどちらかを選ぶ時代ではなく、複数領域で十分な深さを持てる時代になった」と述べた。

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