米カリフォルニア州サンマテオ郡は、ヒューマノイドロボットの商用導入を許可制で管理する条例整備に乗り出した。防火対策や緊急停止機能のほか、雇用への影響を把握する仕組みも検討する。
ブロックチェーン系メディアのCryptopolitanによると、同郡の郡監督委員会は12日(現地時間)、事業者に対し、ヒューマノイドを業務に導入する前の許可取得を求める地域規則の策定手続きに入ることを全会一致で決めた。
今回の採決は最終的な規則の決定ではなく、条例案の作成を関係部門に指示する段階に当たる。今後、郡の法務・行政部門が正式な条例案をまとめる見通しだ。条例が可決されれば、企業は導入前に許可を申請し、手数料を納める必要がある。
検討中の制度は、単に導入の可否を判断するものではない。郡は、緊急停止装置の設置や防火措置に加え、雇用減少の可能性を追跡する仕組みを盛り込む案を視野に入れている。許可手数料を消防装備の購入財源に充てる案も俎上に載っている。
この措置を提案した監督委員のレイ・ミュラー氏は、新技術が広く普及した後ではなく、事前に対応の枠組みを整える必要があると強調した。技術の拡散前に潜在的な問題を把握し、「制御不能になる前に、できるだけ早く対応の枠組みを整えなければならない」と述べた。
郡がとりわけ重視しているのは火災リスクだ。ミュラー氏は、電動自転車やノートPC、自動車などでリチウムイオン電池火災が増えていると指摘。電池を搭載するロボットの火災に備え、特殊な消防装備が必要になる可能性に言及した。
消防士組合も同様の懸念を示している。広報担当のリチャード・セギン氏は、こうした機器が家庭や職場に広がれば、電池火災も増える可能性があると説明した。電池火災は高温で燃焼し、有毒物質の排出も多いため、専用装備が必要だと警告している。
こうした議論の背景には、現場でロボット活用がすでに進んでいることがある。カリフォルニア州内では、ロボットアームが空港やショッピングモールでコーヒーを淹れ、無人車両が乗客を運び、車輪型の配送機器が食品を運んでいる。
サンフランシスコのTau Roboticsは、家庭やオフィスの清掃向けヒューマノイドを1時間あたり30ドル(約4500円)で貸し出している。企業サイトでは、遠隔の人間オペレーターが監督すると説明している。
サンマテオ郡は、カリフォルニア州レベルではヒューマノイド利用全般を対象にした包括的な規制体系が未整備だとみている。そのため、地域レベルで先行して対応することが、新技術の適切な導入を促す上で有効だとの立場を示している。
ミュラー氏は、許可手続きによって得られるデータの重要性にも触れた。ロボットの利用実態や雇用減少、火災、安全上の問題を追跡する上で、こうしたデータは公的機関にとって極めて価値が高いと語った。
一方で、今回の構想について同郡は、ヒューマノイド技術を禁止したり普及を妨げたりすることが目的ではないと強調している。ミュラー氏は、技術の実導入が進む過程で、公的機関も適切に対応できるようにする必要があると述べた。
これに対し、Paws AIの代表であるホリー・エルモア氏は、リスクを真剣に扱う姿勢自体は前向きに評価した。その一方で、どのような安全装置でも、あらゆる故障の可能性を事前に想定することはできないと指摘した。同団体は、最先端AI開発の一時停止を支持している。
今後の焦点は、サンマテオ郡が許可制と安全義務を条例にどの程度まで盛り込むかにある。最終的に条例が可決されれば、ヒューマノイドの商用利用を地方政府が直接管理する米国でも初期の事例の一つとなる可能性がある。