米中の人工知能(AI)開発競争を巡り、いずれの国も他国の技術やサプライチェーンに頼らず優位を確立するのは難しいとの見方が出ている。中国は電力網や製造装置で強みを持つ一方、先端半導体では海外依存が残る。米国もデータセンター拡大に伴う電力制約が課題として浮上している。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが21日付で報じたところによると、Bank of America Global Researchで中国株の共同責任者を務めるマティ・ジャオ氏は、世界の技術サプライチェーンは深く結び付いており、一国だけでAI競争を完結させるのは困難だと指摘した。
同氏によれば、中国は電力網や製造装置の分野で競争力を持つ半面、先端半導体やメモリ、一部の高機能材料では依然として海外サプライヤーへの依存が続いている。
一方、米国も別の制約を抱える。米国の電力網の使用年数は平均30~40年とされ、中国の15~20年に比べて老朽化が進んでいるという。
米国ではデータセンターの増設に伴って電力料金の上昇懸念が強まっており、政治面での反発や地域社会の懸念も広がっている。ジャオ氏は、電力が米国のAI成長におけるボトルネックになり得るとみている。
中国についても、先端半導体分野ではなお打開すべき課題を抱えているとした。
そのうえで同氏は、米中ともに他国との協力は避けられないと強調した。韓国のメモリ半導体、日本の高機能材料や製造装置を例に挙げ、AIサプライチェーンは複数国にまたがって構築されていると説明。競争と協力が並行して進む構図は今後も続くとの見方を示した。
こうした発言は、習近平中国国家主席とドナルド・トランプ米大統領による24日のワシントン会談を前に出たものだ。会談では貿易や地政学上の課題に加え、AIも主要議題の一つになる見通しだ。
これに先立ち、スコット・ベッセント米財務長官と何立峰中国国務院副首相は20日、ニューヨークで約8時間にわたり会談した。両氏は、AIを巡る対話ルートを設けることや、二国間の貿易枠組みを立ち上げることで合意した。
ただ、技術分野を巡る相互不信は根強い。米国は、中国の開発者が自国の先端AIモデルの能力を、蒸留の手法を通じて利用しているとして、繰り返し問題視してきた。
これに対し中国は、米国内で浮上している最先端AI開発のペース抑制論について、米国の技術優位を固定化しかねないと批判している。
一方で、両国は重要技術を巡る相互依存の縮小も並行して進めている。Anthropicの最高経営責任者(CEO)、ダリオ・アモデイ氏は米政府に対し、対中半導体輸出規制の強化を求めた。
中国も、自国テクノロジー企業に対して国産半導体の採用拡大を促している。
それでもAIインフラはなお、世界的な分業の上に成り立っている。中国は電力機器やエネルギー貯蔵システムの主要供給国として存在感を高めており、変圧器輸出も大きく増えた。
中国の2025年の変圧器輸出額は646億元と、前年から約36%増え、過去最高を記録した。
もっとも、中国も日本の特殊装置や材料、米国などが供給する先端半導体や一部の光学技術への依存を引き続き抱えている。