韓国の科学技術情報通信部でAI政策を統括する人工知能政策室が新室長を迎え、第2期体制に入った。これまで高性能GPUの確保や独自AIファウンデーションモデルの開発など、「AI3強」入りに向けた基盤整備を進めてきたが、今後はそれを産業・サービス分野の具体的な成果にどう結び付けるかが問われる局面となる。
同部によると、オム・ヨル新人工知能政策室長は21日に正式に職務を開始した。人工知能政策室は、昨年の政府組織改編で新設されたAI専担組織で、AI政策や産業育成、コンピューティングインフラ、データ、安全・信頼性に関する政策全般を統括している。
前室長のキム・ギョンマン氏は、大統領直属の国家AI戦略委員会で支援団団長に異動した。オム室長は科学技術・人工知能政策協力官から昇進し、人工知能政策室を率いる2人目のトップとなる。
GPU確保と独自AIモデル整備を進めた第1期
キム前室長が率いた第1期の人工知能政策室は、AI3強入りに向けた基盤構築に重点を置いた。政府によるGPU確保、独自AIファウンデーションモデル事業、AIコンピューティングインフラの拡充といった大型プロジェクトを軌道に乗せる役割を担った。
ペ・ギョンフン副首相の就任後は、インフラ確保と国産AIの競争力強化が一段と加速した。1月に施行されたAI基本法をはじめ、AI普及に対応する制度面の整備も進めた。独自AIファウンデーションモデル事業は第2段階評価まで終え、実際の競争力が試される段階に入っている。
ペ副首相の就任から1年余りが過ぎ、同部のAI政策全般でも「成果」を重視する空気が強まっている。こうした中でのオム室長の起用は、既存政策の連続性を保ちつつ、実行力を高める人事と受け止められている。オム室長は、昨年の人工知能政策室発足時にも初代室長候補として名前が挙がっていた。
行政考試40回出身のオム室長は、同部でAI産業・サービスの普及拡大やインフラ政策を幅広く担当してきた。2022年には人工知能基盤政策官に就き、超大型AIの競争力強化策を担った。「全国民AI日常化実行計画」や国産AI半導体の拡充など、主要政策にも関わっている。
その後は情報通信政策官などを歴任し、AIコンピューティングインフラ政策にも携わった。科学技術・人工知能政策協力官時代には、AIデータセンターの拡大に向けた制度改善や、省庁横断の政策連携を担当した。
昨年は、AIDC構築に伴う許認可手続きの短縮などを盛り込んだAIDC特別法の制定作業も支援した。
独自AIモデルやAIDCで成果創出が課題に
第2期の人工知能政策室には、当面の懸案も多い。独自AIファウンデーションモデル事業では、フロンティアAIモデルへの拡張に向けて、新たな評価基準と開発基準を整備する必要がある。国民が体感できるAIサービスの実装を目指す「みんなのAI」事業も、各コンソーシアムによるベータサービス公開を控えている。
このほか、セキュリティAI特化モデル事業に加え、「大韓民国大跳躍」3大メガプロジェクトの主要要素の一つとされるフィジカルAIも、目に見える成果が求められる段階に入った。
AI業界関係者は「技術進化のスピードが速い中、いま必要なのはAI3強を裏付ける具体的な成果だ」とした上で、「とりわけ独自AIモデルのように企業が関わる事業では、不要な論争を招かないよう丁寧な管理が必要だ」と指摘した。
AIDCの拡充も急ぐべき課題だ。政府はAIDCアライアンスを発足させ、データセンター、半導体、冷却、電力など関連エコシステムの連携強化に着手した。ただ、大規模AIDCの整備には、大量の電力を安定供給できる体制の構築が前提となる。
送電網の確保や地域分散、許認可対応など、科学技術情報通信部だけでは解決が難しい論点も少なくない。
政府内のAI政策を担う組織間の連携も、今後の成否を左右する。科学技術情報通信部がAI産業の育成と事業執行を担い、国家AI戦略委員会が省庁横断の戦略立案と調整を担う構図だ。
キム前室長が同委員会の支援団団長に移ったことで、同部が進めてきた独自AIモデルやコンピューティングインフラ、「みんなのAI」などの知見を、省庁横断の政策調整に生かしやすくなったとの見方もある。
別の業界関係者は「いまはAI3強という言葉そのものより、それを裏付ける具体的な数字と事例が必要な段階だ」とし、「国産モデルの活用先、AIDC投資、フィジカルAIの実証といった成果が、今後の政策評価の基準になる」と述べた。