中国のAI企業DeepSeekは、主力モデル「DeepSeek V4 Pro」の正式版「0813」を公開した。API料金は据え置いたが、従来の評価がプレビュー版ベースだったことから、正式版の実力を見極めるには外部検証が必要になりそうだ。
米メディアのDecryptが12日(現地時間)に報じたところによると、DeepSeekは公式発表やブログ投稿を伴わないまま、API料金ページ上のモデル名を「DeepSeek-V4-Pro-0813」に変更した。
V4 Proは4月からプレビュー版として提供されてきた。正式版への移行後もAPI料金は維持し、入力は100万トークン当たり0.435ドル、出力は100万トークン当たり0.87ドル、キャッシュ入力は100万トークン当たり0.003625ドルとしている。
今回の更新で焦点となるのは価格ではなく、モデル重みの変更だ。DeepSeekは7月31日に「V4-Flash」を正式リリースした際、V4 ProのAPIについては変更がないと説明する一方、正式版の公開が近いことを示唆していた。
ただ、Hugging Face上のモデルカードでは、V4シリーズはなおプレビュー版表記のままだ。正式版0813の性能が従来評価からどの程度変化したかは、外部テストを待つ必要がある。
DeepSeekが公表したベンチマークでは、米国勢の先行モデルとの差は大きくないとしている。10種類のエージェント系ベンチマークを提示し、このうち両モデルのスコアがそろった9項目で比較すると、Anthropicの「Claude Fable 5」が平均で5.3%上回った。
一方で、DeepSeekが上回った項目も2つあった。差が大きい一部項目を除けば、平均性能差は約2.8%まで縮小するとしている。
価格差はさらに大きい。Claude Fable 5のAPI料金は、入力が100万トークン当たり10ドル、出力が100万トークン当たり50ドル。入出力を混合したレートでは約30ドルとなり、V4 Proの約0.65ドルに比べて約46倍高い。
タスク当たりのコストでは、差がさらに広がる可能性がある。Claude Fable 5はDeepSeekのモデルより推論時間が長く、生成する出力量も多い特性があるためだ。
Artificial Analysisが集計したベンチマークのタスク当たりコストは、V4-Flashが約3セント、Claude Fable 5が約3.15ドルだった。Hugging FaceのCEO、クレマン・ドゥランジュ氏は、タスク当たりのコスト差が約31ドル対0.04ドルまで広がる可能性があると言及している。ただし、V4 Pro 0813正式版を基準にしたタスク当たりコストはまだ公表されていない。
もっとも、ベンチマーク結果そのものにも限界はある。比較スコアはDeepSeekの自己測定によるもので、具体的なテストインフラも開示されていない。DeepSeekは7月の告知で、自社テスト環境「DeepSeek Harness minimal mode」を近く公開するとしていた。
また、10種類のベンチマークのうち「DSBench-FullStack」と「DSBench-Hard」は、外部リーダーボードのない社内テストセットだ。現時点の公開データだけでV4 Proの優位性を断定するのは難しいとの見方が出ている。
それでも今回の正式版公開は、中国のオープンウェイトAIモデルが持つ価格競争力を改めて浮き彫りにする可能性がある。中国勢が米国の先行モデルとの性能差を1桁台まで縮めつつ、低価格を打ち出すことで、AIモデル市場の価格構造が変わるとの見方もある。
DeepSeekはモデル重みをMITライセンスでHugging Faceに公開しており、今後は外部の開発者や研究者による検証が進む見通しだ。これにより、V4 Pro 0813の実性能とプレビュー版との差も、より明確になるとみられる。
競争環境を左右する要因としては、Anthropic内の製品構成もある。「Claude Opus 5」は複数のベンチマークでClaude Fable 5を上回る性能を示しながら、価格は半額水準に設定されたと伝えられている。
V4 Pro 0813を巡る競争は、単純なスコア比較にとどまらない。高価格のプレミアムAIモデルと低価格のオープンウェイトモデルが性能と費用対効果を競うなか、企業や開発者の選定基準は「最高性能」から「コスト効率」へと移りつつある。