AIの高度化でサイバー攻撃への警戒が強まっている。写真=Shutterstock

暗号資産業界は12日、Bitcoin開発者やオープンソース金融インフラのセキュリティ担当者が高性能AIモデルを早期に利用できるよう、AI企業に対してアクセス枠の拡大を求めた。AIの進化によって攻撃と防御の双方のコスト構造が変わりつつあることを踏まえ、インフラ防衛力の強化を急ぐ狙いがある。

ブロックチェーンメディアのCointelegraphによると、Bitcoin Policy Institute(BPI)は同日、こうした内容を盛り込んだ公開書簡を公表した。

書簡では、Bitcoinコア開発者を含むデジタル資産インフラの防衛に当たる関係者が、AI研究機関のサイバーセキュリティ向けプログラムを利用できないケースが多いと指摘した。一般公開されている高性能モデルについても、ガードレールの制約で実務への活用が難しく、結果として性能の劣るオープンウエートモデルに頼らざるを得ないと訴えている。

署名した企業・団体は、大手AI研究機関に対し、「オープンソース金融インフラを防衛する担当者」向けの常設アクセスプログラムの新設、もしくは既存枠の拡充を求めた。署名にはAfrica Bitcoin Institute、Anchorage Digital、BitGo、Bitwise、Blockstream、Bull Bitcoin、Mara、Kraken、Ledger、Trezorなどが参加した。

業界が問題視しているのは、AIがセキュリティ研究やサイバー攻撃・防御のコスト構造を大きく変えつつある点だ。高性能AIモデルは、大規模なコードリポジトリを横断して潜在的な脆弱性を見つけ出し、複雑な技術作業も短時間でこなせるという。

一方で、こうした能力は防御の高度化に役立つ半面、攻撃側にも同じ恩恵をもたらしかねない。

実際、業界のハッキング被害は拡大している。DefiLlamaの集計では、2026年4月の暗号資産プラットフォームに対するハッキング被害は6億3400万ドルを超え、Bybitのハッキング以降で最大の月間被害となった。

また、2025年2月にはBybitへのハッキングの影響で、業界全体の損失額が約14億ドルに達したという。

AIを活用した脆弱性探索の高度化は、セキュリティ業界全体の警戒感も強めている。バグバウンティプラットフォームImmunefiの最高経営責任者(CEO)、ミチェル・アマドール氏は、Claude Opus 4.8やGPT-5.5といった新モデルが、暗号資産業界のリスクを一段と押し上げたとの見方を示した。

業界は今回の要請を、単なる利便性の問題ではなく、インフラ防衛の問題と位置付けている。書簡では、オープンソースソフトウエアが中核的なデジタル・金融インフラを支えており、Bitcoinだけでも1兆ドル超の価値を下支えしていると強調した。

さらに、オープンソースインフラの脆弱性は、個人の生涯貯蓄を危険にさらす恐れがあると警告した。

今後の焦点は、AI企業がセキュリティ目的に限定した早期アクセスの枠組みを実際に拡大するかどうかだ。公開モデルの安全制御と高性能モデルへのアクセス制限が続く中、Bitcoinやオープンソースの開発者がどこまで防衛力を確保できるかが注目される。

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