米ビットコイン採掘大手のRiot Platformsが、AI開発企業Anthropicと20年総額90億ドルの長期契約を結んだ。AnthropicはRiotのテキサス州ロックデール拠点で191メガワット(MW)の電力容量を確保する。Riotにとっては、ビットコイン採掘中心の事業からAI向けインフラ供給へ軸足を移す転機となる。
米CNBCなど複数の海外メディアが11日付で報じた。Anthropicは今回の契約を通じ、AI計算需要の拡大で逼迫する系統接続済みの電力容量を押さえた格好だ。Riotはこれに先立つリリースで契約相手を「先進的なフロンティアAI企業」とだけ説明していたが、Bloombergは相手先がAnthropicで、契約規模は約90億ドルだと報じていた。
Riotが20年間で見込む売上高は91億ドル。5年ごとの延長オプションが2回行使された場合、総売上高は約161億ドルに膨らむ。
株式市場も好感した。Riot株は契約報道を受けて一時20%超上昇したが、その後は上げ幅を大きく縮小した。大口のAI顧客獲得は好材料と受け止められた一方、投資家は収益寄与の時期や事業転換の進捗を見極めようとしているとみられる。Yahoo Financeの集計では、同社株は年初来で53%超上昇している。時価総額は73億3000万ドルで、世界4位のビットコイン採掘企業とされる。
RiotはすでにAMDとも契約を結んでいる。Compass Pointのアナリスト、マイケル・ドノバン氏は11日付のリポートで、ロックデール拠点は「2社のテナントを抱えるキャンパス」になると指摘した。契約済みのデータセンター関連売上高は98億ドルに達するという。Riotは採掘専業というより、電力と設備を提供するデータセンター事業者へと性格を変えつつある。
ビットコイン採掘企業に対する市場の見方も変わってきた。これまではビットコイン価格に連動するレバレッジ投資先とみなされる傾向が強かったが、AI需要の急拡大と暗号資産価格の低迷長期化を受け、投資家は採掘量よりも電力容量、データセンター資産、エネルギー契約を重視し始めている。上場採掘企業がデジタル資産の生産者ではなく、デジタルインフラの保有企業として再評価されている背景には、こうした変化がある。
この流れが本格化したのは、暗号資産価格が急落した2022年以降だ。当時は、ビットコイン価格が採掘原価を下回る局面で採算が悪化しやすい中小事業者が中心だった。採掘原価には電力コストのほか、設備費や運営費が含まれる。競争激化に加え、4年周期のビットコイン半減期で報酬も減るため、採掘企業には代替収益源の確保を迫る圧力が強まってきた。
採掘企業がAI向けインフラ事業へ展開すれば、投資家はどのAIモデルやアプリケーションが最終的な勝者になるかを見極めなくても、AI需要拡大の恩恵を取り込みやすい。AI企業に共通して必要なのが、電力、計算能力、物理的な施設だからだ。
足元では、Cipher Mining、Hut 8、TeraWulfが、採掘とAI・高性能コンピューティング(HPC)向け事業を併営する企業として位置付けられている。一方でRiotは、Mara HoldingsやCleanSparkと並び、採掘専業色の強い企業とみられてきた。今回の契約は、Riotも同様の事業転換に踏み出したことを示すシグナルと受け止められている。Bitdeer、Core Scientific、IrenもAI・HPC分野へ事業領域を広げている。
Anthropicは先月6日、TeraWulfとも20年総額190億ドル規模のデータセンター賃貸契約を結んでいる。Bernsteinは先月23日付のリポートで、AI企業とビットコイン採掘企業の提携は、AIデータセンターを圧迫する電力不足の緩和に不可欠だと分析した。
今後の焦点は、電力確保を巡る競争の激化だ。ドノバン氏は、テキサス州の電力網運用機関ERCOTが新規の電力プロジェクトをこれまで以上に厳格に審査していると指摘。そのうえで、「接続待ちの投機的な案件の進行は鈍るだろうが、短期間で大規模電力を必要とするテナント需要が弱まるわけではない」と述べた。承認済み電力容量の希少性が、むしろ戦略的価値を高めるとの見方だ。Compass Pointはこれを踏まえ、Riot株の投資判断「買い」と目標株価29ドルを据え置いた。