韓国ゲーム各社が、実績のある知的財産(IP)を軸に新作投入のリスク抑制を急いでいる。開発費が膨らむ一方、ヒットの成否は読みづらくなっており、既存の読者やファン層を持つウェブ小説・ウェブトゥーン原作のゲーム化に活路を見いだす動きが広がっている。
各社は、世界観やキャラクターをゼロから浸透させるのではなく、すでに認知度とファンダムを備えた原作IPを活用することで、初期ユーザーの確保とマーケティング負担の軽減を狙う。Nexonの「テンバル:オーバーギアード」、Netmarbleの「俺だけレベルアップな件:カルマ」「シャングリラ・フロンティア:七つの最強種」、Kakao Gamesの「トッケビの世界」などが代表例だ。
新規IP開発の負担が拡大
新規IPでは、世界観やキャラクターの構築に加え、市場での認知獲得にも多額の費用と時間がかかる。数百億ウォン規模を投じても、ヒットが約束されるわけではない。
これに対し、人気ウェブ小説やウェブトゥーンは、既存読者を通じて認知と選好がすでに形成されている。世界観やキャラクターを一から設計する負担も相対的に小さく、ゲーム各社にとっては初期ユーザー獲得コストを抑えやすい。業界では、こうした構図を「ファンダム経済」と捉える見方もある。
こうした手法自体は新しいものではない。Netmarbleはこれまで、「俺だけレベルアップな件」や「七つの大罪」など、人気ウェブトゥーン・ウェブ小説IPを原作とするゲームを複数展開してきた。下半期の新作も、実績あるIPを活用してヒットにつなげる従来路線の延長線上にある。
有力IPで新作リスクを分散
Nexonが年内に国内外で投入するMMORPG「テンバル:オーバーギアード」は、同名のウェブ小説・ウェブトゥーンを原作とするタイトルだ。「テンバル」は韓国で累計約13億ビューを記録した人気IPで、ウェブ小説は2024年に完結。ウェブトゥーンはKakaoPageで連載中で、10月にはアニメ公開も予定されている。
海外でも、アジアのウェブ小説プラットフォーム「ウシアワールド」で人気1位、日本の「ピッコマ」で売上4位を記録するなど、一定の興行性を示している。
Netmarbleの「俺だけレベルアップな件:カルマ」は、アニメにも展開された「俺だけレベルアップな件」を原作とするモバイル向けローグライトアクションRPGだ。原作で詳しく描かれなかった「輪廻の杯」にまつわる物語をもとに、ソン・ジヌが次元の裂け目で過ごした27年間の君主戦争を主要ストーリーに据えた。
Netmarbleは先月、米国で開催された「Anime Expo 2026」で、原作アニメの英語吹き替え版でソン・ジヌ役を務めたアレックス・リーがゲーム内シーンを実演するプログラムを実施し、原作ファンとの接点拡大を図った。
「シャングリラ・フロンティア:七つの最強種」は、日本で累計閲覧数10億回、コミックス発行部数1700万部超を記録したウェブ小説を原作とする収集型RPG。Netmarble Nexusは原作の世界観を忠実に再現しながら、オリジナルのボスモンスターを登場させるなど、ゲーム独自の要素も盛り込んでいる。
キム・ギョンリュルプロデューサー(PD)はこれを「原作とつながるオリジナリティ」と説明した。Netmarbleは9月の東京ゲームショウ2026で初の試遊版を公開し、日本のファン層の反応を見極める考えだ。
Kakao Gamesの「トッケビの世界」は、ウェブ小説「滅鬼修道伝」を原作とする2.5D MMORPGで、10月に正式リリースする。原作ウェブトゥーンは先月22日にNaver Webtoonで連載を開始し、開始から1日で総合トップ3に入った。
Kakao Gamesはウェブトゥーンの順位上昇直後に、ゲームの10月発売予定を公表した。連載初期に高まった関心をゲーム発売までつなげる狙いとみられる。俳優パク・ジフンを広告モデルに起用するなど、販促にも力を入れている。
著名IPでも成功は保証されず
もっとも、原作IPがあるだけで失敗リスクを回避できるわけではない。著名IPを活用しながら、市場の期待に届かなかった事例は少なくない。原作ファンの期待値が高いほど、ゲームの完成度が不十分だった場合の失望も大きくなるためだ。
ゲーム性、課金設計、原作再現の水準、運営体制が伴わなければ、「IP頼みのゲーム」と受け止められやすい。
一方で、完成度が高ければ原作人気を上回るケースもある。Netmarbleの「俺だけレベルアップな件:ARISE」はその代表例だ。原作ファンに加え、グローバルのアクションRPGユーザーも取り込み、IPゲームでも完成度次第で新たな成功モデルになり得ることを示した。
業界では、実績あるIPは新作失敗の負担を和らげる出発点にはなっても、リスクを完全に消す「保険」ではないとの見方が大勢を占める。
業界関係者の一人は「人気原作を確保しただけでヒットが保証される時代は過ぎた」と指摘。そのうえで「結局は、原作が築いたファンダムをゲームの中でどれだけ安定的に維持できるかが、下半期の新作の成否を分ける」と話した。