暗号資産関連の予測市場スタートアップ2社が、約90分差で相次いでサービス終了を発表した。市場全体は拡大しているものの、取引量はKalshiとPolymarketに大きく偏っており、後発企業の撤退圧力が強まっている。
ブロックチェーンメディアThe Defiantが10日(現地時間)に報じたところによると、予測市場スタートアップのTrepaとFireplaceは同日、それぞれサービス終了を公表した。利用者には9月30日までに資金を引き出すよう案内している。
両社の事業モデルは異なるが、直面した環境は共通していた。DeFiLlamaによると、直近30日間に追跡対象となった40の予測市場の総取引量は148億7000万ドル。このうちKalshiとPolymarketの合計は138億7000万ドルに達し、市場全体の93.3%を占めた。
なかでもKalshiのシェアは75.7%と突出した。3位のBNB Chainベースの予測市場「Opinion」は2.8%にとどまる。市場拡大の一方で、取引流動性が少数のプラットフォームに集中する構図が鮮明になっている。
Trepaは、Solanaベースの独自の予測市場モデルを打ち出していた。予測結果が実際の結果にどれだけ近いかに応じて報酬を配分する仕組みで、ビットコイン価格を対象に、1日1時間、60秒単位のラウンドを提供していた。
ただ、創業チームはこの仕組み自体が成長の制約になったと総括した。利用期間が長くなるほど継続率が低下し、事業拡大と並行して既存構造の課題を解消する方法を見いだせなかったとしている。
利用者獲得にも苦戦した。紹介プログラムは想定ほど機能せず、有料のインフルエンサーマーケティングも効果は限定的だった。外部サービスに予測市場ウィジェットを提供する提携も進めたが、取引時間が1日1時間に限られる設計が拡大の足かせになった。
Trepaは、暗号資産予測市場そのものの潜在ユーザー規模にも疑問を呈した。創業チームは、参考指標としていた暗号資産分野の日次・月次アクティブユーザー数が実態より大きく見積もられている可能性があると指摘。作業仮説として、関連商品の実際のアクティブユーザーは数百万人ではなく、数十万人規模にとどまるとの見方を示した。
地域ごとのサービス制限や入金手続きの煩雑さも、初期の利用者獲得を難しくした要因に挙げている。
一方、Fireplaceは別の戦略を採っていた。自前でオーダーブックを構築せず、香港の登録会社Enclave HK Limitedが運営する形で、Polymarket上のプロ向け取引ターミナルを提供。利用者の注文をルーティングし、手数料収入を得るモデルだった。
しかし、この領域でも競争は激化した。Fireplaceが狙っていたプロ向け取引端末市場に対し、Kalshiが7月13日、無料のデスクトップ端末「Kalshi Pro」を投入したためだ。
Kalshi Proは、約2000の市場を選別表示する画面や、無期限先物の取引インターフェースなどを備える。Polymarketに注文を接続するインターフェースラッパーも20超が登場しており、プロ向け取引ツール市場の競争は一段と厳しさを増している。
Fireplaceは具体的な終了理由を明らかにしていない。ただ、サービス終了ページでは利用者をPolymarketに直接案内しており、既存ポジションも同一のPolymarket市場で継続すると説明している。
もっとも、予測市場全体が失速しているわけではない。資金は一部プレーヤーに集中している。ProphetXは7月28日に3500万ドルを調達し、Pascalも7月16日に900万ドル規模のシリーズA資金調達を実施した。
両社とも、独自のオンチェーン構造そのものより、規制下にある米国市場を主戦場としている。
Trepaの創業チームも、予測市場という発想自体の可能性は否定していない。人々が自らの予測と実際の結果との近さを測るために対価を払うという考え方には、なお事業性があると評価する一方、それを持続可能なビジネスにする道筋は見つけられなかったと認めた。
今回の事例は、予測市場の競争軸が独自の商品設計から、取引量、流動性、ユーザー基盤の確保へ移っていることを示している。参加者が集まるプラットフォームほど流動性が厚くなり、さらに利用者を呼び込む好循環が働くためだ。
市場が拡大しても、すべての事業者が等しく成長できるとは限らない。KalshiとPolymarketへの取引集中が続くなか、後発企業がどのような差別化で流動性と利用者を確保するのかが、今後の市場再編を左右する焦点となりそうだ。