eVTOL向け航空用バッテリーで、安全性とエネルギー密度の両立を示した試験だった。写真=Shutterstock

中国電池大手のCATLは、旅客向け電動垂直離着陸機(eVTOL)向け航空用バッテリーの安全試験を通過した。隣接する2つのセルに意図的に異常を発生させても、熱暴走が周辺セルやパック全体に波及しないことを確認した。eVTOLの実用化に向け、バッテリーの安全性確保と認証対応の両面で前進した格好だ。

同社が実施したのは、航空用バッテリーシステムを対象に、隣接2セルに異常を与えた状態で熱暴走と熱伝播の有無を検証する試験。試験はバッテリーパックの中央部と端部でそれぞれ行われ、いずれの条件でも異常が生じたセルの影響は周辺セルに波及せず、パック全体への熱伝播も確認されなかったという。

航空用バッテリーでは、熱暴走は最重要の安全課題の1つとされる。単一セルの異常が周囲へ急速に広がれば、パック全体の損傷につながり、乗客の安全にも直結するためだ。今回の試験は、特定セルで不具合が生じた場合でも、システム全体へのリスク拡大を抑えられるかを検証した点に意味がある。

CATLによると、セル生産から検査、試験に至るまでの全工程を、中国民用航空局(CAAC)が指定した代表者が確認した。同社は、今回の手続きがeVTOLの民間航空分野における安全認証に向けた基盤になるとの見方を示した。

また同社は、エネルギー密度350Wh/kg級の角形セルをベースとする航空用バッテリーシステムとして、今回の安全試験を通過した初の事例だとしている。

エネルギー密度は電動航空分野で重要な指標だ。eVTOLでは、バッテリー重量が航続距離、搭載量、運航効率に直結する。このため、同じ重量でより多くのエネルギーを蓄えられる電池ほど、商用化競争で優位に立ちやすい。

CATLは、技術開発に加え量産準備も進めていることを明らかにした。eVTOL向けバッテリーの量産準備を終えており、初の適用先として電動垂直離着陸機を開発するAutoFlightを挙げた。

バッテリーメーカーが実際の搭載先まで示したことで、eVTOL市場を見据えた事業化の動きも一段と具体化してきた。ただ、今回の発表では、商用運航の時期や追加顧客、航空機の認証スケジュールについては明らかにしていない。

eVTOL市場はこれまで、機体開発と試験飛行を軸に拡大してきた。一方、商用運航には、バッテリーの安全性確保と航空認証という別のハードルを越える必要がある。とりわけ旅客を乗せる機体では、バッテリー火災や熱暴走が機体全体へ広がらない設計が、認証上の重要要件になる可能性が高い。

今回、CATLがバッテリーパックの中央部と端部の双方で熱伝播の抑制を確認したことは、こうした認証プロセスにおける重要な技術的裏付けになりそうだ。単にエネルギー密度を高める段階から、航空用途に求められる安全基準を満たす方向へ開発が進んでいることを示した形でもある。

CATLの今回の動きは、同社の電池事業が電気自動車向けにとどまらず、電動航空分野へ広がっていることを示すものでもある。eVTOL市場が実際の旅客輸送に近づくなか、電池メーカー各社も、自動車向けとは異なる航空用製品の開発を加速させている。

今後の焦点は、今回の試験結果が実際の航空機認証と商用運航にどの程度早く結びつくかだ。CATLが示した350Wh/kg級のエネルギー密度と熱暴走の波及抑制技術が機体搭載に進み、AutoFlightのeVTOL認証・運航へつながれば、電動航空用バッテリー市場の商用化ペースにも影響を与える可能性がある。

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