米資産運用会社Ark Investのキャシー・ウッドCEOは、米雇用指標が弱含んでも実体経済は大きく崩れていないとの見方を示し、ビットコインとステーブルコインが今後の受益資産になり得ると述べた。生産性向上やAI導入の進展に加え、物価鈍化や原油安の可能性も強気判断の根拠に挙げた。
10日、CoinPostが報じた。ウッド氏は、足元の米雇用指標について「表面的には弱く見えるが、実体経済はそれほど悪くない」と指摘。単純な景気減速シグナルとしてではなく、経済構造の変化と合わせて見るべきだとの認識を示した。
ウッド氏は、7日に公表された米雇用指標を踏まえ、生産性の改善と技術導入が同時に進んでいる点を重視した。数字だけを見れば景気減速を示すように映る一方で、企業の投資や技術実装の動きは別のシグナルを発しているという。
財政面では、米財政赤字の対GDP比が5.6%と、1980年代初頭のレーガノミクス期と同水準にあると指摘した。その上で、Ark Investの想定通りに生産性向上と技術導入が加速すれば、この比率は年末までに5%近くまで低下する可能性があるとした。一方で、多くの予測機関はこうした見通しに懐疑的だとも付け加えた。
設備投資も強気の材料に挙げた。ウッド氏は、現在の設備投資が過去30年のレンジを上回っているとし、市場でくすぶるAIバブル懸念は行き過ぎだとの見方を示した。
物価については、インフレよりもデフレリスクを重視する姿勢を示した。6月の米消費者物価指数(CPI)は前月比マイナス0.4%、生産者物価指数(PPI)は同マイナス0.3%、コア個人消費支出(PCE)物価指数は0.1%にとどまった。ウッド氏は、物価指標の鈍化基調が鮮明になっているとした上で、AIや生産性向上ツールの導入が遅れている企業ほど影響を受けやすいと警告した。
為替と原油の見通しにも言及した。Ark Investは予測市場Kalshiのデータを基に、ドル指数(DXY)が年内に102.6まで上昇する可能性があるとみている。ウッド氏は、海外政府による米国債売却への警戒が高まる局面でも、この見通しは注目に値すると述べた。日本の最近の為替介入についても、ユーロ売り・円買いの性格が強く、ドル売りではなかったと強調した。
原油市場では供給過剰の可能性を指摘した。アラブ首長国連邦(UAE)は5月に石油輸出国機構(OPEC)を脱退し、生産量は過去最高水準に達したという。ウッド氏は、原油価格が大きく下落する可能性があり、世界経済にとってはデフレ方向の追い風になり得るとの見方を示した。
こうしたマクロ認識は、暗号資産の見通しにもつながる。ウッド氏は、金に対するビットコインの比率が再び下げ止まりつつあると評価した。さらに、AIエージェントが決済や取引を自律的に担うエージェント型コマースが広がれば、ビットコインとステーブルコインが最大の受益者になり得ると述べた。
ウッド氏の発言は、単なる価格見通しにとどまらず、デジタル資産の決済インフラとしての役割拡大を見据えたものといえる。ビットコインを価値保存手段、ステーブルコインを取引手段とみる見方が同時に強まる中、今後は米物価の動向やドル高、原油価格の変動に加え、AIベースのコマース拡大が暗号資産市場に与える影響が注目点となりそうだ。