AI導入の広がりで、従業員の不安も強まっている。写真=Shutterstock

職場でAI導入が進むなか、従業員の不安は「仕事を奪われること」以上に、「自分の能力不足が明るみに出ること」に向かっていることが分かった。米ITメディアのTechRadarが8日(米国時間)、Hint Appの調査結果として報じた。

調査は従業員1万842人を対象に実施したもの。それによると、回答者の69%が「AIによって自分の業務能力の不足が明らかになる可能性がある」と不安を感じていると答えた。一方、AIに仕事を代替されることへの不安を挙げた人は41%にとどまった。

この結果は、職場でのAI活用が単なる業務自動化や生産性向上にとどまらず、評価のあり方や雇用不安にも影響を及ぼしていることを示している。業種や企業ごとにAI活用の形は異なるものの、従業員の間では、AIの利用を通じて自分の役割や力量が可視化されるとの受け止めが広がっている。

実務面でも、AIは時間短縮の手段である一方、新たな負担も生んでいる。回答者の64%は、AIが作成した成果物を確認し直すために追加の時間を割いていると答えた。正確性を担保するだけでなく、AIに指示を出す側が業務内容を十分理解していることまで求められる点が、負担感につながっている。

上司の評価をめぐる不安も大きい。53%は、上司が「AIのほうが自分より速い」と受け止めた場合、どのように評価されるのかを気にしていると回答した。反復作業の削減が進む一方で、人間の処理速度や判断のプロセスそのものが比較対象になっている実態がうかがえる。

比較を避けようとする行動も見られた。58%は、自分がAIより遅いことが目立つのを避けるため、人前でAIを活用する場への参加を意図的に控えた経験があると答えた。AIは複雑な業務や単調な作業の自動化にとどまらず、仕事の進め方そのものに新たな圧力をかけている格好だ。

長期的な雇用への不安も確認された。従業員はこれまで、現場での教育や同僚との協業、記録や各種デジタルツールを通じて業務を身につけてきた。しかし、AIが反復的な工程を簡素化・自動化するにつれ、自分の仕事が将来にわたって維持されるのかという懸念が強まっているという。

Hint Appは今回の調査について、企業がAIを何のために使うのか、その目的をより明確に示す必要性を浮き彫りにしたと指摘した。設問からは、AIが生産性や事務効率を高めるためのツールなのか、教育を支援する手段なのか、それとも最終的に代替可能な職務を見極めるためのものなのか、従業員側の迷いや不安が表れている。

企業のAI導入は、もはや単なる技術実装の問題ではなく、組織運営の課題へと広がっている。従業員が強く感じているのはAIそのものへの恐れではなく、AIを前提にした期待値や比較のされ方だ。今回の調査は、企業がチームにAI活用を求める際、何を期待し、その過程でどのような責任を負うべきかが問われていることを示している。

キーワード

#AI #職場 #スキル格差 #Hint App #TechRadar #業務自動化 #失職不安
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.