米民主党が11月の中間選挙で下院の過半数を奪還した場合、ドナルド・トランプ米大統領の財務と暗号資産事業を巡る調査が議会の優先課題に浮上する公算が大きい。これに伴い、暗号資産業界が今年の重点法案と位置付ける市場構造法案「クラリティ法」の審議も、いっそう不透明になっている。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが8日(現地時間)に報じたところによると、焦点となっているのは、民主党がトランプ一族の暗号資産事業と大統領職との利益相反を法案支持の前提条件としている点だ。共和党が下院の主導権を維持する間は見送られてきた召喚要求や公聴会も、民主党が多数派を奪還すれば再び動き出す可能性がある。
メリーランド州選出のジェイミー・ラスキン下院司法委員会の民主党幹部は、民主党が下院を奪還した場合、公聴会や証言記録、召喚状の発出などの権限を活用できると述べた。トランプ大統領を巡る腐敗問題については、「国家的緊急事態」と位置付けている。
調査対象には、パム・ボンディ司法長官やトランプ側近らのための18億ドル規模の「反武器化」基金のほか、外国報酬条項違反の疑いなどが含まれる。
争点の一つとなっているのが、トランプ大統領が申告した2025年の暗号資産関連収益だ。米政府倫理局に提出された927ページの財務開示文書によれば、同大統領は関連収益が10億ドルを超えると申告した。
このうち約6億3500万ドルは、TRUMPミームコイン事業に連動した「セレブレーション・コイン」によるロイヤルティ収入だった。さらに5億ドル超は、一族が共同創業した暗号資産企業World Liberty Financial(WLFI)の販売収益として計上された。
アリゾナ州選出のヤサミン・アンサリ下院議員(民主党)はすでに、下院監視委員会に対し、バロン・トランプ氏の召喚を求めている。バロン・トランプ氏はWorld Liberty Financialの共同創業者で、保有する暗号資産は約1億5000万ドル規模とみられている。
もっとも、こうした召喚要求は、共和党が下院の議事運営を握る現状では棚上げされている。
クラリティ法の審議も足踏み状態が続く。ジョン・スーン上院共和党院内総務は、8月の休会前に法案を採決しない方針を示しており、上院での審議は9月14日以降に持ち越された。
上院でフィリバスターを回避するには60議席が必要で、法案成立には民主党の協力が欠かせない。
民主党は、トランプ大統領の暗号資産保有を巡る利益相反への対応が法案に反映されない限り、支持しない構えだ。民主党議員約12人は支持に含みを残しているものの、トランプ一族が暗号資産事業から利益を得る構造を制限する倫理条項の導入を求めている。
トム・ティリス上院議員(ノースカロライナ州、共和党)とルーベン・ガジェゴ上院議員(アリゾナ州、民主党)は、トランプ氏の資産処分要件を盛り込んだ修正案を共同で提示した。ただ、ホワイトハウスや他の共和党議員が受け入れるかどうかは見通せない。
上院民主党内では強硬論も強まっている。エリザベス・ウォーレン上院議員とリチャード・ブルーメンソール上院議員は8月初め、米証券取引委員会に対し、TRUMPミームコインがいわゆる「ラグプル詐欺」に当たるかどうか調査するよう求めた。
両議員は、このコインによって最大100万人の投資家が38億ドル超の損失を被る一方、トランプ氏本人は6億3600万ドルを得たと指摘している。
市場でも法案成立の見方は急速にしぼんでいる。予測市場Polymarketでは、クラリティ法が年内に成立する確率は約38%まで低下し、従来の80%超から大きく後退した。Kalshiでも、2026年内の成立確率は約20%とみられている。
暗号資産規制を巡る議論は、産業振興の枠組みづくりだけでは進まなくなっている。11月の中間選挙の結果次第では、米議会の優先順位は市場構造の整備よりも、トランプ一族の暗号資産事業を巡る実態解明へと傾く可能性がある。