米国は、半導体と太陽光の基幹材料であるポリシリコンを対象に、最低輸入価格と15%の関税を導入する。中国主導の供給網への依存を見直し、米国内の半導体・太陽光生産基盤を強化する狙いだ。
Bloombergが8月7日(現地時間)に報じたところによると、ドナルド・トランプ米大統領は通商拡大法232条に基づき、ポリシリコンと関連製品に新たな輸入規制を適用する方針を決めた。
ポリシリコンは超高純度のシリコン材料で、太陽光パネルや半導体の製造に欠かせない。太陽光分野ではポリシリコンからインゴット、ウエハー、セル、モジュールへと加工が進み、半導体も高純度シリコンを基盤に生産される。
ホワイトハウスの文書によると、最低輸入価格はポリシリコンが1kg当たり21ドル、ポリシリコン製のインゴットとウエハーが同100ドル。太陽光セルは1ワット当たり0.22ドル、太陽光モジュールは同0.38ドルに設定する。これらに15%の関税を課し、措置は12月4日に発動する予定だ。
米政府は輸入規制に加え、国内での生産能力増強も促す構えだ。ホワイトハウスは、商務省がポリシリコンおよび関連製品の生産設備に投資する企業を支援するためのインセンティブ制度を整備できるようにしたとしている。
今回、米国がポリシリコンの供給網に踏み込んだ背景には、中国依存の是正がある。ポリシリコンは太陽光サプライチェーンの中でも中国の影響力が特に大きい分野とされる。輸入障壁を引き上げる一方で、国内投資を促し、供給網の上流工程を米国内に呼び戻す狙いがあるとみられる。
米国の太陽光業界からは歓迎の声が上がっている。米国内に生産拠点を持つT1 Energy、First Solar、Hanwhaの米国太陽光事業であるQcellsなどは、今回の政策を前向きに評価した。
T1 Energyのダン・バルセロ最高経営責任者(CEO)は、今回の決定について、米国の先端製造業と国内エネルギー供給網への投資を下支えする重要な措置だとコメントした。T1 Energyはテキサス州で太陽光パネル工場を運営しているほか、セル生産施設にも5億1000万ドルを投じている。
米国内のポリシリコンメーカーも前向きに受け止めている。CorningとShin-Etsu Handotaiの合弁会社であるHemlock Semiconductorは、ミシガン州で生産施設を運営する。Corningは、今回の決定が米国内の生産能力への継続投資を促し、長期的な競争力の向上につながるとの見方を示した。
ドイツのWacker Chemieも、テネシー州でポリシリコン生産施設を運営している。同社は具体的な影響を精査中としつつも、半導体サプライチェーンの強靱化や先端コンピューティングインフラ、国防・安全保障の観点から、米政府が関連課題に継続して取り組んでいる点を評価した。
今回の措置の背景には、米国の太陽光製造業が抱える構造的な弱さもある。米国の太陽光産業は、議会が2022年に税制優遇を導入して以降、生産基盤を広げてきたが、拡大の中心は最終工程のパネル組み立てだった。ウエハーやセルなどの上流・中間工程は、依然として輸入依存度が高い。
米国の太陽光業界はこの10年、中国企業が政府補助金を背景に低価格品を供給し、米企業の競争力を損なってきたと主張してきた。中国企業が既存の対米関税を回避するため、東南アジアなどに生産拠点を移したとの批判も出ている。
半導体サプライチェーンも重要な論点だ。半導体産業協会によると、半導体産業が世界のポリシリコン需要に占める割合は約2.4%にとどまる。裏を返せば、米国内で半導体向けポリシリコンの生産基盤を維持するには、太陽光産業の大規模需要が欠かせないことを示している。半導体と太陽光を別個の産業としてではなく、一体のシリコンサプライチェーンとして捉える必要があるというわけだ。
一方で、施行が12月に設定されたことで、短期的な副作用を懸念する声もある。中国の太陽光企業を相手取る複数の通商訴訟に関わってきた弁護士ティム・ブライトビルは、関税と最低輸入価格の適用前に輸入が急増する可能性を指摘した。
また、太陽光パネルの購入企業には、新たな価格体系に合わせて供給契約を調整する時間が必要だとの見方も出ている。
現在、米国内のポリシリコン生産拠点は2カ所にとどまるとされる。輸入障壁と投資インセンティブを併用する今回の措置が、ポリシリコンからインゴット、ウエハー、セルに至る供給網全体の国内投資をどこまで押し上げられるかが、今後の焦点となる。