Teslaの最新FSDソフトウェアで、同じ車載コンピュータを使う車両でも、歩行者の飛び出しに対する反応時間が大きく短縮したことが分かった。最新世代のHW4搭載車が最も速かった一方、旧世代のHW3搭載車でも、ソフトウェア更新だけで反応時間が3割超改善した。
電気自動車メディアのInsideEVsによると、YouTuberのTechGeek Teslaは8月7日(現地時間)、異なるハードウェアとFSDソフトウェアの組み合わせを導入したTesla車3台で、歩行者の飛び出しへの反応時間を比較した。
検証は同じルート、同じ速度、同じ条件で実施した。車両が時速23マイル(約37km)で所定の地点に近づくと、道路脇に設置した滑車装置が人型ダミーを車両前方へ引き出し、車両がそれを認識して反応するまでの時間を測定した。
比較したのは、HW3搭載車2台とHW4搭載車1台。HW3搭載車にはそれぞれFSD v12.6.4とFSD v14 Light、HW4搭載車にはFSD v14.3.4を導入した。
最も速かったのはHW4+FSD v14.3.4の組み合わせで、反応時間は0.450秒だった。これに対し、HW3+FSD v14 Lightは0.675秒、HW3+FSD v12.6.4は1.065秒だった。
HW4+FSD v14.3.4は、HW3+FSD v12.6.4に比べて反応時間が約57.7%短かった。一方、同じHW3でもFSD v14 Lightを導入した車両は、FSD v12.6.4の車両より約36.6%短く、差は約0.39秒だった。
注目されるのは、ハードウェアをHW3からHW4に更新しなくても、ソフトウェアの違いだけで反応時間に明確な差が出た点だ。HW3+FSD v14 LightはHW4搭載車には及ばないものの、同じHW3でも旧版ソフトを使う車両より大幅に速く反応した。
InsideEVsは、HW4搭載車が最も高い性能を示したこと自体は想定内としつつ、今回の比較はFSDの性能がハードウェアだけで左右されるわけではないことを示したと評価した。その一方で、今回の1回の検証だけでTeslaのFSD全体の自動運転性能を断定することはできないとも指摘している。自動緊急ブレーキや自動運転システムの安全性は、単一の反応時間だけでは判断できないためだ。
それでも、不意の飛び出しを認識し、制動や回避判断につなげるまでの時間は、自動運転システムにおける重要な指標の1つといえる。反応時間が短いほど、突発的な状況に対応できる余裕は大きくなる。
今回の結果は、TeslaがFSDソフトウェアの最適化を重視する理由とも重なる。同じHW3搭載車でもソフト更新だけで反応時間が大きく縮んだことで、既存車の性能をどこまで引き上げられるかが、今後のFSDの競争力を左右する要素になり得るためだ。
Teslaはハードウェア強化も進めている。新たなHW4プラットフォームではメモリ容量を2倍に増やす案を進めており、次世代のAI5チップでも現行システムを大きく上回る演算性能を目指している。
より強力な演算資源は、複雑なAI推論モデルを車載環境で動かす基盤になる。地図や周辺環境の認識にとどまらず、瞬間的に発生する走行状況をより速く判断する能力にも影響する可能性がある。
TeslaのFSD性能は、今後もハードウェアとソフトウェアの両面から改善が進む可能性が高い。HW4や次世代AIチップが物理的な計算能力を高める一方、ソフトウェア更新は既存車でも搭載ハードウェアの性能をどこまで引き出せるかを左右する。
今回の検証結果を踏まえると、TeslaのFSD性能を評価する際には、車両のチップやセンサー構成だけでなく、どのFSDバージョンを導入しているかも併せて確認する必要がありそうだ。