写真=SK OnのNCM9系パウチ型電池

パウチ型電池が、防衛分野やロボット向けで再び注目を集めている。EV市場の減速を受け、電池メーカー各社が防衛、ロボット、エネルギー貯蔵システム(ESS)へと用途を広げる中、円筒形や角形では対応しにくい領域で需要が出始めているためだ。一方、採用の可否を大きく左右するのは熱暴走対策で、関連素材を手掛ける企業に先行需要が向かう動きもみられる。

業界によると、パウチ型電池はエネルギー密度と設計自由度で円筒形や角形を上回る。セルを薄型化しやすく、限られた空間や複雑な形状にも合わせて搭載しやすい。体積や重量が性能に直結するロボット、ウェアラブル、軍用機器との相性がよいとされる。

ただ、外装が金属缶ではないため、1セルで異常が発生した場合に隣接セルへ熱が伝わりやすい点が課題とされてきた。EV市場でパウチ型電池が主流になり切れなかった背景にも、この脆弱性があったとの見方がある。

セル段階での有力な解決策とされる全固体電池の実用化には、なお時間を要する。Samsung SDIは「InterBattery 2026」で、ヒューマノイドロボットなどフィジカルAI向けを想定したパウチ型全固体電池のサンプルを初公開し、2027年下半期の量産を掲げた。これは韓国電池大手3社の中でも最も早い量産計画とされる。

LG Energy Solutionは無負極系のロボット向け全固体電池を2030年に、SK Onは硫化物系の全固体電池を2029年に商用化する計画だ。業界では、それまでの3〜4年を既存フォームファクターの安全設計で補う必要があるとみている。

このため、足元の技術競争はセルそのものよりも、セル外部の熱管理や安全設計に軸足が移っている。LG Chemは、熱暴走の遅延を狙ったエンジニアリングプラスチック「SFB」と、エアロゲルベースの遮熱素材「NexulA」を投入し、電池安全素材市場に参入した。両素材を組み合わせた統合安全ソリューションで、熱管理分野での主導権確保を目指す。

LG Chemによると、SFBは炎にさらされると表面が硬く緻密なバリアへと変化し、炎や圧力の伝播速度を遅らせる。軽量で加工性にも優れ、バッテリーパック設計の自由度を高めやすい点も特徴という。NexulAはセル間、モジュール間、パック内部での熱拡散を物理的に遮断する役割を担う。

両素材を重ねて使うことで、熱を遅らせながら遮断する二重構造を形成できるという。SFBは、世界的に強化が進む熱伝播規制への対応素材として評価され、「InterBattery 2026」でInterBattery Awardsの信頼性・安全性部門と持続可能性部門を受賞した。

◆防衛分野が先行、課題は素材コスト

熱暴走管理技術の売上が最も早く立ち上がりやすいのは、防衛分野とみられている。韓国IR協議会・企業リサーチセンターによると、ITM Semiconductorは2027年から、輸出向け潜水艦用の中大型バッテリーパックで1隻当たり約200億ウォン規模の売上を計上する見通しだ。関連する輸出潜水艦は、その後数年で10隻に達する見込みという。

この事業は、Hanwha Aerospaceが2023年下半期、国防技術振興研究所の「武器体系製造開発支援事業」における輸出潜水艦向けリチウム電池システムの開発事業者に選定されたことを契機に始まった。ITM Semiconductorはセル開発の専門企業として参加した。

潜水艦がリチウム電池へ移行する背景には、容量と騒音の問題がある。従来はディーゼルエンジンで鉛蓄電池を充電し、その電力で推進モーターを駆動してきた。だが、次世代潜水艦ではより大きな容量と低騒音化が求められ、鉛蓄電池では対応が難しいとされる。

もっとも、潜水艦へのリチウム電池搭載には爆発防止装置が前提となる。バッテリー管理システム(BMS)は、電圧や電流を事前に制御して爆発リスク要因を抑える仕組みであり、潜水艦向けリチウム電池では選択肢ではなく事実上の必須要件だ。企業リサーチセンターは、潜水艦向けバッテリーパック事業は売上規模が大きく、技術難度も高いため、相対的に収益性も高いとみている。

需要はロボット分野でも広がりつつある。Mirae Asset Securitiesによると、LG Electronicsは「CES 2026」でホームロボット「Cloi」と、ロボット駆動部であるアクチュエーター「Axiim」を公開し、2027年の外販計画を示した。これに伴い、ロボット向けセルやパックの需要拡大が見込まれるという。

加えて、データセンター向けバッテリーバックアップユニット(BBU)や電力網向けESSなど、高密度・高出力環境の拡大も追い風となる。Mirae Asset Securitiesは、LG Chemの先端素材部門の収益性が四半期ごとに改善すると予想しており、その根拠の一つとしてESS向けセパレーター売上の増加を挙げた。

残る課題はコストだ。ESSのように数量を見込める市場へ広げるには、単価の引き下げが欠かせない。量産技術の確立に加え、他のフォームファクターとの互換性も同時に解決する必要がある。

全固体電池が量産軌道に乗るまでの数年間、熱管理素材がどの領域まで採用を広げられるかが、その後の市場構図を左右しそうだ。業界関係者は「防衛とロボットは市場規模こそ限られるが、安全要求が高く、素材単価を吸収しやすい。一方で、本格的な大量生産には時間がかかる可能性がある」と話している。

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