暗号資産決済カードの1日当たり利用額が20日、3682万ドルに達し、過去最高を更新した。Visaの決済ネットワーク拡大に加え、米国でステーブルコイン規制の整備が進んだことが追い風となっており、市場では投機ではなく実需に支えられた伸びとの見方が強まっている。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが、決済データプラットフォームPaymentScanの集計として報じた。同日の利用額は、暗号資産決済カード市場として過去最高だった。
今回の増加は一時的な急騰ではない可能性がある。過去1年の日次利用額はおおむね1000万ドル規模から、足元では約3倍に拡大した。ビットコインなど主要暗号資産が明確な上昇基調を示さない局面で利用額が伸びた点も注目される。
事業者別では、暗号資産カードプラットフォームのKASTが20日に1364万ドルの決済額を記録し、1280万ドルだった香港のステーブルコイン決済企業RedotPayを上回って初めて首位に立った。ただ、首位は翌日には再び入れ替わった。足元ではKASTとRedotPayの2つのカードプログラムが市場の大半を占め、他社との差も広がっている。
市場では、今回の記録を価格上昇に連動した投機需要ではなく、実際の利用拡大を映す動きと受け止める声がある。ビットコイン相場はおおむね横ばいで、20日を前にした時点でも市場心理は弱気圏にあった。それでもカード利用額が伸びたことは、利用者がステーブルコインをチャージし、商品やサービスの決済に実際に使っていることを示している。
背景には、制度面の整備と決済インフラの拡大がある。2025年7月には米国でGENIUS法が制定され、ステーブルコイン発行体は初めて連邦レベルのルールの枠組みを得た。規制の不透明感から慎重だった大手企業も、徐々に市場参加に前向きになっている。加えて、VisaはKASTとRedotPayの双方に決済ネットワークを提供しており、約1億5000万の加盟店で利用できる環境が整った。
需要の広がりは米国外でより鮮明だ。多くの地域では米国の銀行口座の開設が難しく、ステーブルコインが実質的に当座預金口座に近い役割を果たしているためだ。KASTとRedotPayは、米銀口座を持たずにドル建て資産を保有・利用したい需要を取り込んでおり、こうした利用者はビットコイン相場の動向にかかわらず増加している。
一方で、KASTの首位浮上は市場構造の変化というより、インセンティブ施策の影響とみる向きが強い。KASTは第4四半期に予定するトークン発行イベントを前にポイントキャンペーンを展開しており、決済利用に応じて報酬を付与している。このため、ポイント獲得を狙った利用者が取引を前倒しし、1日当たりの決済額を押し上げた可能性がある。
仮にKASTが実需ベースでもRedotPayを上回ったのであれば、その後も首位を維持していても不思議ではない。ただ、累計取引量ではなおRedotPayが上回る。20日の急増は、主導権の交代というより、インセンティブが短期的に決済額を押し上げた事例とみるのが妥当だ。
今後の焦点は大きく2つある。暗号資産決済カードの利用増が短期的なキャンペーン効果にとどまらず、継続的な消費行動として定着するか。さらに、ステーブルコイン規制の明確化とVisaの決済網が、実際の決済市場の拡大をどこまで後押しするかが注目点となる。