写真=Reve AI。宇宙は監視・通信支援の領域にとどまらず、軍事衝突の初動を左右する戦場として重みを増している

米国の安全保障当局は、台湾を巡って米中が軍事衝突した場合、戦闘の初動が地上ではなく宇宙空間で始まる可能性があると警戒を強めている。中国が衛星網と対衛星兵器の整備を急ぐ一方、米軍の高い宇宙依存が弱点になりかねないためだ。

米メディアCryptopolitanは2日(現地時間)、米安全保障当局が、中国はすでに軌道上で兵器システムの開発・試験を進めているとみており、台湾有事で宇宙が主要な戦場に変わる可能性を注視していると報じた。

焦点となっているのは、米軍の宇宙アセットへの依存度の高さだ。米外交問題評議会(CFR)は昨年9月に公表した分析で、中国が台湾へ軍事行動を起こした場合、地上配備レーザーで台湾海峡を監視する米偵察衛星を無力化する可能性があると指摘した。

艦艇や航空機の作戦行動を支える索敵、照準、通信衛星まで攻撃対象になれば、米国と同盟国は事実上「目隠しをされたまま戦う」状況に追い込まれかねないという。

米宇宙軍も、宇宙領域での優位確保を安全保障の中核課題と位置付けている。昨年4月に公表した交戦ドクトリンでは、「宇宙優勢」の維持と、相手に宇宙で主導権を握らせないことを重視した。

米国が特に警戒しているのが、中国の宇宙戦力拡大のスピードだ。米宇宙軍の宇宙脅威関連資料によると、中国は6月だけで37回の軌道打ち上げを実施し、現在は1506基超のペイロードを軌道上で運用している。

このうち510基超は、米空母や遠征戦力の探知が可能な衛星に分類されるという。

中国は今年の打ち上げ目標を140回に設定した。従来の目標から52%引き上げた水準になる。

対衛星兵器は、中国が以前から注力してきた分野でもある。中国人民解放軍は2007年、地上発射ミサイルで老朽化した気象衛星を破壊した。米国防情報局(DIA)は、中国が約3万6000km先の静止軌道にまで到達可能な対衛星兵器の発射能力確保を目指しているとみている。

米軍内部では、中国の拡大ペースへの警戒感が一段と強まっている。宇宙軍の戦闘作戦を統括するグレゴリー・ガニョン中将は、豪キャンベラで、中国は世界最大規模の宇宙軍を保有し、その戦力は米国の3倍規模に達するとの認識を示した。

また、習近平政権発足初期の2013年には約70基にとどまっていた中国の衛星数が、現在は1400基規模まで増えたと説明した。ガニョン中将は、中国の宇宙戦力拡大は「ゆっくり」ではなく、世界級の短距離選手並みの速さで進んでいると述べた。

こうした中、米国と同盟国も対応を急ぐ。ガニョン中将は、米国と豪州は防御にとどまらず、同盟側の艦艇や部隊を追跡する中国の宇宙システムを無力化する準備が必要だと主張した。

これを受け、米空軍省は次年度予算として3388億ドルを要求し、このうち711億ドルを宇宙軍に配分した。宇宙軍予算は前年から124%増となり、宇宙統制プログラムにも216億ドルを計上した。

再使用ロケット技術も、宇宙戦の重要要素として浮上している。中国は7月10日、ネット捕獲方式で「長征-10B」の第1段を回収したのに続き、8月19日には全長66.1mの民間ロケット「ジューチュエ-3」の制御着陸に成功した。

再使用型打ち上げ機の技術が進めば、戦時に破壊された衛星を迅速に補充したり、大規模な衛星コンステレーションを短期間で構築したりできるためだ。

中国はすでに、西側の衛星ネットワークに対抗する大型コンステレーションの構築を進めており、そのために数百基の衛星を打ち上げたという。ロシアも低軌道衛星群「Rassvet」の構築を進めているが、軍事専門メディアは、米中の宇宙開発競争でロシアが後れを取る可能性を指摘している。

民間投資の世界でも、宇宙を新たな戦場とみる見方が広がっている。Andreessen Horowitz(a16z)は今年6月、「宇宙戦争に勝つ方法」と題した報告書で、ロシアが東欧全域の衛星測位システム(GPS)受信機を妨害してきたほか、中国もStarlink攻撃の可能性を公然と検討してきたと指摘した。

ロシアが2022年のウクライナ侵攻初期、サイバー攻撃でViasatのKa-Satネットワークを機能不全に陥らせた事例も、宇宙・通信戦の代表例として挙げられる。当時のウクライナは、通信を維持するためStarlinkなど別の商用サービスへの依存を余儀なくされた。

米安全保障当局は、台湾を巡って米中が実際の衝突に踏み切れば、戦争初期の主戦場が衛星通信、偵察、位置情報を巡る宇宙空間になる可能性があるとみている。

衛星を失えば、敵の動きを把握し、部隊を指揮する能力そのものが低下しかねないためだ。もっとも、現時点で武力衝突が差し迫っていることを意味するわけではない。宇宙が将来の軍事衝突の勝敗を左右する中核領域として台頭している点に、改めて注目が集まっている。

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