生成AIにとどまらず、ロボティクスや産業分野への展開を狙うプロジェクト。写真=NVIDIA

日本政府がNVIDIAと連携し、国家レベルのAIインフラ整備に乗り出す。ロボットや産業自動化で活用するフィジカルAIの競争力確保を狙い、今後5年間で最大1兆円を投じる見通しだ。

TechRadarが20日(現地時間)に報じたところによると、経済産業省はAI連合体NOESTRAとNVIDIAの協業を支援し、国家AIプロジェクト「FRONTIA」を推進する。

NOESTRAは、NEC、Sony、Honda、SoftBankなど44の企業・研究機関で構成する連合体。6月30日にFRONTIAの運営事業者に選定され、同プロジェクトは2030年まで推進される予定だ。

FRONTIAは、日本が進める国内主導のAIエコシステムの中核基盤に位置付けられている。産業分野で活用可能な高性能マルチモーダルAIモデルの開発に必要な計算資源を提供し、ロボット、産業設備、医療など実世界で稼働するフィジカルAIのエコシステム構築を目標に掲げる。

アカザワ・リョウセイ経済産業相はFRONTIAについて、「日本のフィジカルAIエコシステムの中核」と説明した。日本の製造技術と産業現場のデータを基盤に、NVIDIAを含むグローバル技術企業と連携し、信頼性の高いマルチモーダルAIモデルを開発することで、産業競争力の強化に加え、世界的な社会課題の解決にもつなげる考えを示した。

プロジェクトでは、NVIDIAの次世代AIプラットフォーム「Vera Rubin」をベースにしたインフラを導入する計画だ。稼働後は、NOESTRAが開発するマルチモーダルAIモデルを、日本国内の企業やAI開発会社が共同利用できるようにする。NVIDIAのAIソフトウェアやライブラリもあわせて提供する予定としている。

今回の取り組みは、日本の製造業の強みとNVIDIAのAI技術を組み合わせる国家戦略の一環とみられる。日本は製造現場で蓄積してきたデータを活用し、ロボットや産業自動化に特化したAI競争力を確保するとともに、生成AIの先にあるフィジカルAI分野での先行を狙う。

NVIDIAの創業者兼CEO、ジェンスン・フアン氏は、「日本は現代の製造業を生み出した国だ」と述べたうえで、「いまは次世代の産業革命を支えるAI工場を構築している」と語った。日本の産業界と協力し、国家産業や経済、将来のイノベーションを支えるAIインフラの整備に参画する意義を強調した。

一方で、この大規模プロジェクトをめぐっては懸念も出ている。NOESTRAと日本政府の財政執行プロセスの透明性が十分ではないとの指摘に加え、中核インフラを米国企業のNVIDIAに依存する構図は、技術主権の観点から論点として浮上する可能性がある。

超大型AIインフラの運用に伴う電力消費の増大やコスト負担も課題だ。業界では、FRONTIAが成功すれば、日本が製造業を基盤とするフィジカルAI分野で競争力を確保する契機になるとの見方がある。一方で、自動化拡大に伴う雇用の変化や技術主権、エネルギーコストをめぐる議論は今後も続きそうだ。

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