米国の暗号資産市場の制度設計を担う「Clarity法案」を巡り、成立への見通しが後退している。予測市場では2026年末までに成立する確率が32%まで低下した。最大の争点は倫理条項で、上院が夏季休会に入る8月7日までの審議期間は約4週間にとどまる。
18日付のCoinpostによると、パトリック・マクヘンリー前米下院金融サービス委員長は同法案について、「1996年の電気通信法以来、最も重要な技術分野の立法」と評価した。一方で、市場では成立時期を慎重にみる見方が強まっている。
ノースカロライナ州選出の元下院議員であるマクヘンリー氏は、米経済誌Fortuneへの寄稿で、Clarity法案はこれまでの金融改革とは性格が異なると主張した。2008年の金融危機後に導入されたドッド=フランク法のような事後対応型ではなく、危機に先回りする包括的な制度設計だと位置付けた。
さらに、約30年ぶりの本格的な試みだとも指摘した。特に1996年の電気通信法になぞらえ、インターネットの商業化前夜に整備された規制枠組みが、その後のIT企業の成長と米国の技術覇権を支えたとの見方を示した。
明確なルールが整えば、起業家は安心して事業を立ち上げられるとして、暗号資産分野でも同様の制度基盤が必要だと訴えた。
超党派支持への期待もある。マクヘンリー氏は、ステーブルコイン規制法案「Genius法」が上下両院で超党派の支持を得て可決されたことを挙げ、Clarity法案でも幅広い支持が形成されつつあるとした。他国が規制整備を急ぐなか、同法案の成立は米国の資本市場の競争力を維持するうえで重要だとの認識も示した。
ただ、予測市場の見方は厳しい。Polymarketでは、Clarity法案が2026年12月31日までに成立する確率は32%と、過去最低水準まで低下した。これは今年2月に付けた82%から約50ポイント低い水準となる。
5月初旬以降は、上院の審議日程が圧縮されたことも重荷となっている。
法案成立の最大の障害とみられているのが倫理条項だ。大統領や副大統領、議会議員などの政府高官が在職中に暗号資産関連事業から利益を得ることを制限する内容が焦点となっている。
ドナルド・トランプ米大統領の金融開示で、暗号資産関連の収益が10億ドル(約1500億円)を超えることが明らかになった後、民主党内では条項強化を求める声が強まった。
民主党のクリス・バンホレン、クリス・マーフィー、ジェフ・マークリーの各上院議員は、倫理面の懸念が解消されない限りClarity法案に反対する考えを示した。委員会審査で賛成票を投じたルーベン・ガジェゴ氏とアンジェラ・アルソブルックス氏も、本会議での賛成条件として倫理条項の整備を求めている。
共和党側も楽観はしていない。トランプ大統領は16日、シンシア・ルミス氏、バーニー・モレノ氏と倫理条項を協議したが、17日時点で公式な合意には至っていない。
上院は13日に会期を再開しており、夏季休会入りする8月7日までに法案を審議できる時間は約4週間しかない。この日程の逼迫も、成立見通しを一段と不透明にしている。
Galaxy Digitalのリサーチ責任者、アレックス・ソーン氏は、上院がClarity法案と並行して国防権限法の審議も進める見通しだと指摘したうえで、「今後4週間が、今会期中にClarity法案を成立させる最後の機会になる可能性が高い」と述べた。
Clarity法案は、米国の暗号資産規制の方向性を左右する中核法案と位置付けられている。ただ、上院内の倫理条項を巡る調整と限られた立法日程という現実的な壁に直面している。今後数週間で民主党の反対をどこまで抑え込めるか、共和党が採決に向けた票固めを進められるかが最大の焦点となる。