米暗号資産交換業者のCoinbaseで、コードの95〜100%がAI生成またはAI支援によって作成されていることが明らかになった。AIの活用は開発部門にとどまらず、運用や検証、組織運営にも広がっており、社内ではほぼ全社員が日常的にAIを使っているという。
ブロックチェーン専門メディアのCointelegraphが14日(現地時間)に報じたところによると、Coinbaseでプラットフォーム統括を務めるロブ・ウィトフ氏は「現在、コードの95〜100%はAIを活用して書いている」と語った。2月時点で約40%としていたAI作成コードの比率は、この数カ月で大きく伸びた格好だ。
AIの浸透は開発組織の枠を超えている。ウィトフ氏は、ほぼすべての社員が毎日AIを利用していると説明した。
ブライアン・アームストロングCEOも5月に社員向けメールで、AIが業務スピードを「劇的に変えている」と評価したうえで、AIを軸に創業初期のスピード感と集中力を取り戻す必要があると強調した。同月、Coinbaseは約700人の人員削減を実施している。
もっとも、あらゆる開発業務をAIが担っているわけではない。ウィトフ氏によれば、AIの活用の度合いはプロジェクトの性格によって大きく異なる。暗号技術に関わる中核コードでは、人による作成やレビューの比重が依然として高い一方、社内向けのプロトタイプ開発では、ほぼ全面的にAIが担っているという。中核サービスの開発はその中間に位置するとした。
コード検証の工程でもAI導入は進む。CoinbaseはAIを使い、動作確認やセキュリティ脆弱性の検査、数学的検証などを実施している。ただ、この段階でも人による直接レビューはなお一定程度残っている。
AIの普及は開発人員の構成にも影響を及ぼしている。ウィトフ氏は、現在ではエンジニア2〜3人で、従来は10人超が担っていた業務を回せると説明した。直近の構造改革では特にジュニア開発者への影響が大きかったとする一方、削減は開発部門に限らず、マーケティング、法務、カスタマーサポート、コンプライアンスなど全社で実施したと明らかにした。
エンジニアの働き方も変わりつつある。現在、Coinbaseの開発者は同時に5〜10のAIエージェントを活用しており、同社はそれらが担うコーディング作業量を約1200人分の開発人員に相当するとみている。
ウィトフ氏は、今後はAI活用がさらに拡大するとの見通しも示した。2030年には、AIエージェントが最大10万人規模の人員の担う業務を処理できる可能性があるという。
一方で、AI利用が急増しているにもかかわらず、コストは想定ほど膨らんでいない。アームストロングCEOは、AIトークンの使用量は大幅に増えたものの、関連費用はほぼ横ばいで推移していると説明した。
こうした動きはCoinbaseに限らない。暗号資産業界では、AIを軸にした生産性向上と組織のスリム化が同時に進んでいる。Crypto.comは今年、社員の約12%を削減し、Blockのジャック・ドーシーCEOも全体の約40%を削減しながら、AI中心の組織運営を打ち出した。
Kraken、Gemini、Messari、Duneなどの主要暗号資産企業も、AIによる業務効率化と組織再編を進めている。
Coinbaseの事例は、AIが単なるコーディング支援を超え、ソフトウェア開発の手法や組織構造そのものを変えつつあることを示している。ただ同社は、重要なセキュリティや暗号技術、戦略的な意思決定の領域では、引き続き人の判断が不可欠だとの立場を維持している。