中国はAI戦略の軸足をロボットハードに移しつつある。写真=Unitree

中国が、AI競争の軸足をソフトウェアからロボティクスへ移しつつある。次期5カ年計画ではロボティクスをAI戦略の柱に据え、ヒューマノイドや産業用ロボットに政策・資金を重点配分する構えだ。

ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが14日(現地時間)に報じた。米国が先端AIモデルや半導体で優位性の維持を急ぐ一方、中国ではロボット産業全体を次の成長領域として押し上げる動きが強まっている。

中国は17日に開幕する2026世界人工知能大会(WAIC)で、次世代ロボット技術を大規模に公開する予定だ。生成AI中心だった競争領域を、ロボティクスへ広げていることを示す場になりそうだ。

会場では、中国企業がさまざまな形態のヒューマノイドや産業用ロボットを披露する。Swancor Advanced Materialsは、車輪移動、2足歩行、4足歩行を単一プラットフォームで切り替えられる個人向けロボット「Quester1」を公開する。

Unitreeは5月、大型有人メカ「GD01」を披露した。LimX Dynamicsも、デュアルアームに加え、2足歩行と車輪移動を切り替えられるモジュール型ヒューマノイド「TRON 2」を発表している。

政府の後押しも強まっている。ABI Researchのロボティクスアナリスト、ジョージ・チョウドゥリー氏は、中国の第15次5カ年計画に、AIとロボティクスの育成に向けた約3000億ドル規模の補助金が盛り込まれる可能性が高いとの見方を示した。

民間マネーの流入も進む。中国のフィンテック企業Ant Groupは、ヒューマノイド新興Xerossの7358万ドル(約110億円)の資金調達を主導した。今年に入り、同分野で12件目の主要投資案件に当たるという。

中国では、ヒューマノイド関連のスタートアップが150社超活動している。昨年の出荷では、AgibotとUnitreeが市場を主導したとされる。

生産規模でも中国の優位は大きい。チョウドゥリー氏によると、昨年世界で出荷されたヒューマノイドロボット約1万9000台のうち、97%が中国で生産された。

同氏は、比較的緩い規制環境を追い風に、中国が娯楽施設や公共空間にヒューマノイドを積極投入し、市場を急拡大させたと分析する。

OpenMind創業者のヤン・リーフハルト氏は、中国の競争力は短期間で築かれたものではないと指摘した。「電気自動車を理解すれば、センサーや半導体、バッテリー、充電技術、製造まで、関連技術全体を押さえることにつながる」と述べ、EVのサプライチェーン構築で蓄積した製造基盤が、ロボット産業の競争力につながっていると分析した。

中国政府も、ロボティクスを国家の重点産業として育成を進めている。国際ロボット連盟(IFR)は、中国の第15次5カ年計画について、2026〜2030年にロボティクスを産業政策の中心に据え、AI研究も実用化重視へシフトする内容になると評価した。

中国はすでに世界最大の産業用ロボット導入国でもある。現在、約200万台の産業用ロボットを運用しており、日本の約4.5倍に当たるという。世界の新規産業用ロボット設置台数の54%も中国が占めた。

もっとも、技術デモと実際の現場投入にはなお隔たりがある。IFRは、最近公開されているヒューマノイドのダンスやマラソンのデモについて、技術アピールの色彩が濃く、実際の産業現場では依然として実証段階にとどまっているとみている。

Mercator中国研究所も、中国のヒューマノイドは精密作業能力や手先の器用さがなお不十分で、NVIDIAのAIチップや海外製ソフトウェアへの依存度も高いと分析した。商用化には、現在の価格を少なくとも半分程度まで引き下げる必要があるとも指摘している。

こうした課題は米国でも大きくは変わらない。米航空宇宙局(NASA)でロボティクス責任者を務めたロバート・アンブロス氏は、米国でも特定用途に特化したロボットでは成果が出ているものの、汎用型ヒューマノイドはまだ初期段階にあると評価した。

スタンフォード大学の研究によると、制御された環境で90%近い性能を示したロボットでも、実際の家事作業での成功率は12%にとどまった。Figure AIのヒューマノイド「Figure 02」も、BMW工場で1250時間にわたり9万個超の部品を移動させたが、担当したのは単一工程に限られた。

それでも、ハードウェア性能の改善は続いている。米国の研究チームは最近、Unitreeのヒューマノイド「G1」を使い、生きた豚を対象に腹腔鏡下胆のう摘出術を成功させた。研究結果は国際学術誌Natureに掲載された。

研究チームは、ヒューマノイドが生体動物に対して低侵襲手術の全工程を遂行した初の事例だとしている。

米中のAI競争はさらに激しさを増している。米国は先端AIチップの輸出規制を強化しており、中国も海外AIモデルの利用制限に動く。生成AIと半導体を巡る競争が続くなか、中国が新たな成長軸として打ち出したロボティクス戦略が、実際の産業競争力につながるかが注目される。

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