PsiQuantumは14日(現地時間)、光子を使う大規模量子コンピューターの開発を進めていることが分かった。MIT Technology Reviewによると、既存の半導体製造設備でチップを生産し、冷却キャビネット約100台を接続することで、実用規模のシステム構築を目指している。
同社は2016年、英国の大学で学んだ物理学者4人が設立した。小型の試作機にとどまってきた従来の量子コンピューターとは異なり、創業当初から大規模な商用システムの実現を掲げてきた。
昨年には10億ドル(約1500億円)を調達した。シカゴでは地元政府と拠点整備に着手しており、オーストラリアでも第2拠点の準備を進めている。
同社は2027年までに施設の稼働開始を目指す。ただし、これは冷却設備やハードウェアの設置体制が整うことを意味し、フルスケールの量子コンピューター完成を指すものではない。
PsiQuantumの最大の特徴は、量子ビットの担い手として超伝導回路や電子ではなく光子を採用している点だ。光子は量子状態を長く保てる半面、相互作用しにくく、演算を制御するのが難しい。
この課題に対し、同社は光学スイッチやビームスプリッター、検出器ネットワークを組み合わせる方式を採る。レーザーで光子を生成して量子もつれ状態をつくり、回路内で演算した後、最後に単一光子を測定する仕組みだ。
現在はカリフォルニア州ミルピタスの施設で、3台のキャビネットを接続し、それぞれ250個のチップを使って試験を進めている。次の段階では、オーストラリア拠点に大規模な冷却システムを導入したうえで、キャビネット約100台の接続を目指す。
装置は現在、2ケルビンで動作している。液体ヘリウムを使う冷却設備は、同社にとって主要な投資項目の一つという。
供給網の構築も同社戦略の柱だ。チタン酸バリウムは自社で製造し、ニューヨーク州マルタのGlobalFoundriesに送ってチップを生産する。データセンター向けシリコンフォトニクスに近い量産体制を活用し、生産効率を高める考えだ。
PsiQuantumはMicrosoftとともに、米政府の量子企業評価プログラムで第3段階に進んだ2社のうちの1社でもある。一方で、外部からは技術検証が容易ではないとの見方も出ている。
また、Lockheed Martin、Mercedes、Airbusと連携し、素材、バッテリー、航空宇宙分野向けのアルゴリズム開発も進めている。フィリップ・エルンスト副社長は、薬物分解に関わるP450酵素の計算を4分まで短縮することが目標だと明らかにした。