米連邦準備制度理事会(Fed)のケビン・ウォッシュ議長は、金融危機が起きた場合でも暗号資産企業の救済には乗り出さない考えを示した。暗号資産を米金融システムの一部と位置付ける一方、中央銀行による安全網の対象とはしない立場を明確にした。暗号資産関連メディアのU.Todayが14日(現地時間)に報じた。
ウォッシュ議長は最近の議会公聴会で、Fedの役割はデジタル資産業界を後から支えることではないと述べた。Fedの使命はシステミックリスクの予防にあるとしたうえで、「救済に踏み切る状況は望まない」「暗号資産を含め、誰であれ救済の対象にしたくない」との認識を示した。
暗号資産市場の混乱が金融システム全体に波及したとしても、中央銀行が個別企業の救済に動くことはないという考えを示した格好だ。
一方で、暗号資産そのものを金融システムの外側にある特殊な領域とは見ていない。4月の上院承認公聴会では、暗号資産が金融システムの外に置かれるべきではないとの認識を示していた。「デジタル資産はすでに米金融サービス産業の構造の中に組み込まれている」とも述べており、既存金融の一部として認めつつも、公的支援を期待すべきではないとの立場を示した。
また、米国での中央銀行デジタル通貨(CBDC)導入にも反対した。CBDCについては「望ましくない政策の選択肢だ」と評価した。この見方は共和党議員の多くの立場とも重なる。民間のデジタル資産の存在は認める一方、連邦レベルでのデジタルドル発行には否定的な姿勢を示した。
今回の公聴会では、インフレと米経済全般も主要な論点となった。ウォッシュ議長は、6月の物価指標だけでインフレ鈍化を判断すべきではないと警鐘を鳴らした。「単月のデータにすぎない」「データを過度に読み込んだり、恣意的に解釈したりすべきではない」と述べ、短期的な指標の改善だけで物価や金融政策を巡る負担が和らいだとは見ていない考えをにじませた。
そのうえで、Fedの最優先課題はインフレ率を2%目標へ戻すことだと改めて強調した。政治的圧力に左右されず、中央銀行の独立性を守る考えも表明した。歴代議長から学んだ点はあるとしつつ、最終的には自らの判断で金融政策を運営する意向も示した。
技術分野では、人工知能(AI)に比較的前向きな見方を示した。AIが米国の生産性を大きく押し上げる可能性があると評価し、過去の技術革新と同様の流れが続けば、今回のAIサイクルを通じて米国は一段と豊かになり、生産性も高まるとの見通しを示した。
一方、量子コンピューティングについては国家レベルでの対応を急ぐべきだと指摘した。連邦レベルには大きな人材基盤があるとしながらも、技術進展のスピードに合わせて取り組みを加速させる必要があると述べ、量子技術をより強い国家的関与が求められる分野に位置付けた。
一連の発言は、Fedが暗号資産を金融システムの一部と認めながらも、危機時の個別救済には踏み込まないという原則を改めて示したものだ。同時に、物価安定、中央銀行の独立性、AIと量子コンピューティングへの対応といった政策上の優先順位も浮き彫りにした。