Airbnbのブライアン・チェスキー最高経営責任者(CEO)は、実物資産(RWA)のトークン化市場で最終的な競争力を左右するのは技術そのものではなく「信頼」だとの見方を示した。市場は急拡大しているものの、機関投資家資金や利用者を引きつけるのは、資産の実在性、運用体制、償還の確実性を検証できるプラットフォームだと指摘している。
この見解は、ブロックチェーン関連メディアのU.TodayやCryptopolitanが14日(現地時間)に報じた。チェスキー氏はX(旧Twitter)の公開スレッドで、RWAトークン化市場を長く見てきたとした上で、「大半はノイズに近いが、その下では本当に何かが起きている」と評価した。
同氏は、現在の議論がブロックチェーン技術やトークンそのものに偏りすぎていると指摘した。注目すべきなのは技術ではなく「所有のあり方の変化」だとし、建物や債券、ファンドの一部を、メッセージを送るのと同じくらい簡単に売買できる環境が整えば、所有は一部の特権ではなく、より広く開かれたものになると説明した。
RWAは、不動産や国債、プライベートクレジット、ファンドといった伝統的な金融資産を、ブロックチェーン基盤のデジタルトークンとして発行する仕組みを指す。投資家は資産全体を取得しなくても一部持ち分を保有でき、24時間取引や迅速な決済、国境をまたいだ投資機会の拡大など、従来市場の効率化が期待されている。
ただ、チェスキー氏は、こうした利点だけでは市場は定着しないと強調した。Airbnb創業初期を引き合いに、見ず知らずの利用者同士が家を貸し借りできたのは、プラットフォームに対する信頼があったからだと説明。トークン化資産でも、裏付け資産が実在するのか、適切に管理されているのか、投資家が必要な時に円滑に償還できるのかといった点への信頼が、市場拡大の前提になると述べた。
その上で、今後は「グローバルで、分割可能で、即時に行われる所有」が新たな標準になるとの見通しを示し、「結局、信頼が勝者と敗者を分ける」と語った。
市場規模は足元で拡大している。報道によると、トークン化された実物資産の規模は年初の約450億ドルから約650億ドルへ増加し、伸び率は約44%に達した。Ethereumは現在、RWA市場の約3分の1を占める中核インフラと位置付けられている。
一方、集計機関によって数値には差があるものの、市場が拡大基調にある点では一致している。RWA.xyzは7月中旬時点で、トークン化された実物資産の規模を340億8000万ドルと集計し、関連資産の保有者数は100万人を超えた。BlackRockのトークン化米国債ファンド「BUIDL」も、複数のブロックチェーンネットワークで約28億7000万ドル規模に拡大しており、機関投資家主導の市場拡大をけん引している。
機関投資家の関心も高まりつつある。Bybitの伝統金融・RWA部門のグローバル統括を務めるヨイ・ワン氏は、イベント「LEAP East 2026」で、機関投資家はもはやブロックチェーンが機能するかどうかを疑う段階にはなく、そのインフラをどこまで信頼できるかを見極める局面に入ったと説明した。規制の明確性、安定したインフラ、金融機関との連携が、長期的に機関資金を呼び込むプラットフォームを決める主要要素になるとの見方も示した。
チェスキー氏は、AirbnbとしてRWA事業に参入する可能性や、暗号資産に関する具体策には触れなかった。ただ、インターネットが情報の流通を変えたように、トークン化には資産の所有と移転のあり方を根本から変える可能性があると評価した。RWA市場の勝敗は、華やかな技術デモではなく、資産の検証、運用体制、償還構造をどこまで信頼できる形で構築できるかにかかっているというのが同氏の認識だ。
こうした見方は、他の業界関係者にも広がっている。Binance創業者のチャンポン・ジャオ氏も、各国政府に株式市場をブロックチェーンへ移行するよう促してきた経緯がある。ジャオ氏は、トークン化株式によって24時間取引、決済の迅速化、分割保有が可能になるとみている。RWA市場では今後、単なる資産発行の競争ではなく、機関投資家資金を受け入れられる信頼基盤を誰が先に築くかが焦点になりそうだ。