次世代の半導体パッケージ材料として注目されるガラス基板を巡り、競争の軸が技術実証から素材を含む供給網の構築へと移りつつある。Samsung Electro-Mechanicsが住友化学グループ系企業と合弁会社を設立し、ガラス基板の中核材料を内製化する一方、SKCは米国で量産拠点を先行整備しており、主導権争いが新たな段階に入った。
Samsung Electro-Mechanicsは2日、住友化学グループの100%子会社Dongwoo Fine-Chemと、ガラス基板の中核材料「Glass Core」を生産する合弁会社「Glassem(仮称)」の設立に関する本契約を締結した。出資総額は4800億ウォン(約528億円)で、出資比率はSamsung Electro-Mechanicsが66%、Dongwoo Fine-Chemが34%となる。
同社の開示資料によると、Samsung Electro-MechanicsはGlassem株式6382万株を3191億ウォン(約351億円)で取得する。取得予定日は9月1日。本社と生産拠点は京畿道平沢のDongwoo Fine-Chem事業所内に置き、2027年下期の稼働を目指す。
Glassemは、Samsung Electro-Mechanicsの基板設計・製造技術と、住友化学の材料技術、Dongwoo Fine-Chemの生産インフラを組み合わせ、ガラス基板の骨格となるGlass Coreの自社供給体制を築く枠組みだ。Samsung Electro-Mechanicsはこれを足がかりに、AppleやBroadcomなど大手テック企業のサプライチェーン入りを狙う。
チャン・ドクヒョン社長は「Glass Coreの中核競争力を先んじて確保するための戦略的な選択だ」とした上で、「両社のシナジーを最大化し、次世代半導体基板市場のパラダイムを主導していく」と述べた。
これに対し、先行して市場参入を進めてきたのがSKCだ。SKCはSamsung Electro-Mechanicsの本格参入に先立ち、関連投資を拡大している。
SKCは5月、有償増資により当初計画を1600億ウォン上回る1兆1671億ウォン(約1284億円)を調達した。このうち5896億ウォン(約649億円)をガラス基板子会社Absolicsに投じ、残る5775億ウォン(約635億円)は債務返済に充てる。
SKCの2025年1~3月期連結業績は、売上高が1兆7216億ウォン(約1894億円)、営業利益が762億ウォン(約84億円)だった。10四半期ぶりに営業黒字へ転換し、投資余力は一定程度回復した。Absolicsは世界初のガラス基板量産ラインとなる米ジョージア州の第1工場の建設を終えている。
ただ、SKCは同月の開示で「具体的な量産日程を見通すのは難しい」と説明しており、商用化の時期はなお不透明だ。市場参入で先行した優位が、そのまま量産スピードの優位につながるかは見極めきれておらず、4~6月期の業績動向にも関心が集まっている。
業界によると、Absolicsは最終的な量産判断の関門となる信頼性評価をまだ通過していない。潜在顧客はAMDを含む4社で、月末に信頼性試験向けサンプルを顧客へ引き渡し、データセンターやハイパースケーラー向けの供給を優先的に提案する計画だという。
また、顧客認証の前倒しを狙い、従来のエンベデッド方式に加えて、実装しやすいノンエンベデッド方式を並行展開する二本立て戦略に切り替えたとされる。別途、SKCは米国の通信半導体企業に対し、次世代ネットワーク半導体向けノンエンベデッド型ガラス基板の試作品を供給し、新規プロジェクトを進めている。顧客側で信頼性評価も進んでいるという。
素材確保が量産競争のカギ
両社が競うように投資を拡大する背景には、大手テック企業発の需要拡大がある。TSMCやIntelなど世界の半導体メーカーがガラス基板技術の導入を相次いで進めているためだ。AI半導体の大型化に伴い、従来基板では微細回路の実装や反りの抑制に限界があるとの指摘が強まっている。
需要拡大とともに、材料調達も重要な変数として浮上した。低熱膨張ガラス繊維「T-Glass」は日本企業が事実上独占的に生産しており、年初には供給逼迫への懸念も取り沙汰された。Samsung Electro-Mechanicsが合弁会社を通じて材料内製化に踏み切った背景には、こうした事情があるとみられる。
証券会社では、両社の強みを異なる角度から評価する見方が出ている。SK証券はSamsung Electro-Mechanicsについて、MLCCとFCBGAを自社生産する唯一のグローバル部品メーカーであり、エンベデッド基板やシリコンキャパシターを経てガラス基板へつながる技術の積み上げが差別化要因になると分析した。
最終的な主導権を左右するのは、実際の量産時期だ。量産開始が正式に示されて初めて、業界は実使用を通じて性能や歩留まりを検証し、採用可否を判断できるとの見方が多い。
先行するSKCが信頼性評価を先に通過すれば先行効果は一段と強まる。一方で量産日程が後ろ倒しになれば、2027年下期の稼働を掲げるSamsung Electro-Mechanicsの合弁会社Glassemとの差は縮まる可能性がある。素材調達まで組み込んだ両陣営の競争は、次世代AI半導体のサプライチェーン再編を左右する要素として存在感を増しそうだ。