写真=LG Uplus本社

LG Uplusが、AIエージェント「ixio」の適用領域を通話支援から生活領域全般へ広げている。検索や予定管理、ローミング機能を拡充し、将来的にはスマートホームや車載機器、ロボットと連携するフィジカルAIへの展開も視野に入れる。月間利用者数は約150万人に達している。

通信業界によると、同社はixioを高度化し、フィジカルAIとの連携にも対応する統合AI基盤へ発展させる方針だ。スマートフォン内で通話を補助するサービスにとどまらず、音声を軸に多様なデバイスや空間をつなぐAmbient AIへと進化させる戦略を描いている。

◆月間利用者は150万人規模に

ixioは2024年11月に導入したサービスで、「見える電話」、代理応答、通話録音・要約、リアルタイムのボイスフィッシング検知などを主な機能として展開してきた。2025年10月には「ixio 2.0」を公開し、「AI会話検索」「AIスマート要約」「Discover 2.0」などを追加した。

AI会話検索は、過去の通話に出てきた待ち合わせ場所や日程、やり取りの内容などについて、ユーザーが質問すると関連する通話を探して答える機能。AIスマート要約は通話中の重要な内容を素早く整理する。Discover 2.0は、通話やメッセージのデータを分析し、利用者に必要なAI機能を提案するページとして提供している。

2026年初めには、モバイル・ワールド・コングレス(MWC)で「ixio Pro」を披露し、エージェント機能をさらに拡張した。ユーザーの指示を待つだけでなく、状況や文脈を先回りして把握し、必要な行動を能動的に提案するAIエージェントへ育てる構想だ。

例えば、通話前には過去の会話やメッセージから重要情報を整理し、通話中にはAI検索で関連情報を提示する。通話後には、やるべきことをリスト化し、予定や業務の管理につなげる。最近では「ixio Roaming Call」も投入した。海外滞在中でも、国内で使っている電話番号のまま韓国との発着信を可能にするサービスだ。

同社は今後、ixioをスマートフォン上の通話AIから、スマートホーム、車載機器、ロボットなどの物理デバイスと連動するフィジカルAIサービスへ広げる計画だ。利用者の音声や通話内容、予定といった文脈をAIが把握し、接続された機器が実際の動作を担う形を想定している。

◆SK Telecom「A.」との差別化が焦点

業界では、競合サービスとの差別化がixioの成長戦略を左右するとの見方が多い。SK Telecomの「A.」は、通話に加え、予定管理、コンテンツ、情報検索、モビリティなど生活全般をつなぐ汎用AIエージェントを志向している。2025年10月の月間アクティブユーザー数(MAU)は1000万人を超えた。A.は電話機能だけでなく、T mapやB tvなどSK Telecomの連携サービスにも適用している。

これに対し、ixioのMAUは足元で約150万人にとどまる。LG UplusはA.とは異なり、通話と音声ベースの体験に軸足を置いて差別化を図る構えだ。通話前後の情報検索、予定登録、ボイスフィッシング検知、ローミングまでを一連の流れとしてつなぐ設計を採っている。

さらに、フィジカルAIとの連携も打ち出し、現実空間と結び付くAIエージェントへの進化を狙う。通信網やスマートホーム、車載通信、ロボット事業などをixioと接続し、顧客接点を広げながら新たなサービスモデルを模索する動きとみられる。

業界関係者は「通話データを基盤に自社のユーザー体験を高め、ローミングや料金プラン、顧客管理など既存事業と結び付ける方が現実的と判断しているのだろう」としたうえで、「長期的には、音声AIをスマートホームやモビリティ、ロボットなどのフィジカルAIサービスとつなぐことが、ixioの差別化要因になり得る」と話した。

◆有料化より利用基盤の拡大を優先

LG Uplusはixioを主力AIソリューションに位置付ける一方、収益化には慎重な姿勢を崩していない。2025年の業績発表では一部機能の有料化方針を示したが、現時点では無料提供を続けている。業界関係者は「まずは利用者基盤を広げ、サービスのロイヤルユーザーを育成することを優先しているようだ」と語った。

もっとも、スマートフォン標準の通話アプリやA.など競合サービスが録音・要約機能を無料で提供するなか、単純な機能課金だけで利用者の支出を促すのは容易ではない。業界では、ixioならではの検索精度や業務自動化、セキュリティ機能の強化が必要との見方が出ている。

同社が進めるフィジカルAI連携は、収益化の有力な手段にもなり得る。スマートホームや車載機器、ロボットなど外部デバイスをixioにつなぎ、高度な自動化機能を料金プランやサブスクリプションとして提供する形だ。企業向けには、音声エージェントと機器制御技術を組み合わせたB2Bモデルへの展開も可能としている。

海外通信事業者との協業も成長の足がかりと位置付ける。5月にはマレーシアの通信事業者Maxisと、ixioの現地商用展開で合意した。ixioをSaaS(Software as a Service)として提供し、現地の通信環境や言語に合わせて適用するモデルだ。これに先立ち、中東・アフリカ地域で事業を展開するZain Groupとも、ixioのグローバル展開に向けた業務協約を結んでいる。

別の業界関係者は「一般消費者向けの提供コストをB2B売上で回収する戦略に見える」としたうえで、「加入者維持の手段を超えて独立したAI事業として成長するには、早期に収益モデルを示す必要がある」と述べた。

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