メモリ不足への対応を巡り、SEMIは生産拡大支援と消費者負担の軽減を重視する姿勢を示した。写真=Shutterstock

人工知能(AI)向けデータセンターの拡大でメモリ需要が急増する中、半導体業界団体のSEMIが米政府に対し、特定産業向けの優先供給など市場への直接介入を控えるよう求めた。生産拡大を後押しする税制支援には賛成する一方、価格や供給先を政策的に動かす措置には反対する立場を鮮明にしている。

6日付のオンラインメディア「Gizazine」によると、Samsung Electronics、SK hynix、Micronなどが参加するSEMIは1日、スコット・ベッセント米財務長官宛てに書簡を送付した。書簡では、メモリ市場をゆがめかねない政策に反対する考えを伝えた。

業界が特に問題視しているのは、供給不足を理由に自動車産業など特定分野へのメモリ優先配分を政府が促す動きだ。SEMIは、米国内の半導体生産拡大に向けた税制支援は支持するとしつつ、価格や生産能力、供給先を政府が直接調整すれば、かえって供給不足の長期化を招く恐れがあると指摘した。

SEMIは書簡で、「特定産業を対象とした供給介入は市場の回復力を損ない、供給難をより長引かせるリスクがある」と強調した。

今回の要請の背景には、AIインフラ投資の拡大がある。生成AIサービスの普及やデータセンター建設の増加を受け、高帯域幅メモリ(HBM)を中心にメモリ需要が急拡大している。この影響で、消費者向け機器を含む幅広い分野で価格上昇圧力が強まっているという。

こうした動きは、スマートフォンやノートPC、ゲーム機など一般消費者向け製品の価格にも反映されているとの見方もある。

実際、米政界では自動車産業へのメモリ優先供給を求める声が出ている。共和党のバーニー・モレノ上院議員は4月、米商務省に書簡を送り、Samsung Electronics、SK hynix、Micronが米自動車業界向けのメモリ供給を優先できるよう協力すべきだと主張した。

あわせて、海外向け販売を制限してでも米自動車産業のサプライチェーンを守るべきだとの考えも示した。

これに対し半導体業界は、供給配分を政策的に動かすよりも、消費者支援の方が有効な代替策だと訴えている。SEMIは、スマートフォンやノートPCの価格上昇に伴う負担を抑えるため、消費者向け税額控除制度の導入を米政府と議会に提案した。

供給先を強制的に振り替えるより、消費者負担を直接軽減する方が、市場のゆがみを最小限に抑えられるとの判断だ。

SEMIはあわせて、需給不安は短期間では解消しにくいとの見方も示した。メモリ生産量は年率約19%で増えているものの、AIインフラ拡大に伴う需要の伸びがそれを上回っているためだ。

その結果、ノートPCや自動車、家電など多くの産業で、メモリの供給制約が今後も続く可能性が高いと予測した。

米国の半導体政策を巡る議論は、単なる供給拡大策から、市場にどこまで介入するかという論点へと移りつつある。業界は生産拡大に向けた税制支援には賛同する一方、特定産業への優先配分や価格・生産判断に影響を及ぼす措置には一線を画している。

メモリ不足の長期化が懸念される中、米政府が産業別の供給介入と消費者支援のどちらを軸に対応を進めるのかが、今後の焦点となりそうだ。

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