韓国で、虚偽・操作情報の流通に対して最大5倍の加重損害賠償と最大10億ウォンの課徴金を導入する改正情報通信網法が7日に施行される。いわゆるフェイクニュースによる被害救済を強化する狙いだ。一方で、施行を前にオンライン上では「コメントまで気軽に書けなくなるのではないか」「KakaoTalkにも規制が及ぶのではないか」といった懸念も広がっている。
◆コメントも処罰対象になるのか
コメントであっても、虚偽・操作情報を故意または過失で拡散し、他人に損害を与えた場合は、一般の損害賠償責任を問われる可能性がある。
法が規制対象として定めるのは「掲載者」で、投稿の形式は問わない。掲載者とは、情報通信サービスを利用し、情報通信網に自ら作成または選別した情報を掲載・流通させる者を指す。
一方、裁判所が損害額を最大5倍まで引き上げる加重損害賠償の適用を判断する際には、4つの要件を確認する。情報が虚偽・操作情報に当たるかという「虚偽性」、掲載者がそれを認識していたかという「認識」、損害を与える、または不当な利益を得る目的があったかという「目的性」、実際に被害者の人格権や財産権などが侵害されたかという「侵害性」だ。単なる意見表明や批判、政治的主張そのものは、これらの要件には当たらない。
損害賠償とは別に、投稿やコメントの削除、表示制限も可能となる。一般利用者の投稿やコメントでも、通報が受理されれば、プラットフォームが自律運営ポリシーに基づいて違反の有無を判断し、削除や表示制限を実施できる。この場合、掲載者には措置の理由と異議申し立て手続きが通知される。
◆虚偽と知らずに共有した場合も責任を問われるのか
原則として責任は問われない。情報が虚偽であることを知り得ず、過失もなければ、損害賠償責任は生じない。加重損害賠償の4要件のうち、「認識」と「目的性」を欠く場合は、加重損害賠償の対象にもならない。
もっとも、事実だと信じるに足る根拠があったかどうかは、個別の事案ごとに判断される。ただし、虚偽だと認識した後も繰り返し流布した場合は、責任が認められる可能性がある。
◆KakaoTalkやSMSも規制対象になるのか
一部は対象となる可能性がある。メッセンジャー、電子メール、メモなどの私的コミュニケーションは規制対象から除外される。一方、オープンチャットのように不特定多数が参加し、情報が公開状態で流通するサービスは、公開性や拡散性を基準に対象に含まれる可能性がある。最終的には今後の裁判所判断に委ねられる。
◆虚偽・操作情報の判断は誰が行うのか
初期判断はプラットフォームが担う。不服がある場合は、プラットフォームへの再異議申し立てに加え、放送メディア通信審議委員会の紛争調整部による手続き上の調整を申請できる。内容面で争いが残る場合は、民事訴訟を通じて裁判所の最終判断を仰ぐことになる。
初期判断の基準として、プラットフォームは韓国インターネット自律政策機構(KISO)のガイドラインを用いる。中核メッセージの真実性、全体の文脈、欺瞞的な外観の有無などが主な判断要素となる。これを踏まえ、各プラットフォームは自社の自律運営ポリシーを整備し、その方針に沿ってサービスを運営する。
プラットフォームが独自に判断しにくい事案については、放送メディア通信委員会傘下の透明性センターが、連携するファクトチェック団体の検証報告書を参考資料として支援する仕組みとなっている。
当該措置に不服がある場合、通報者と掲載者の双方は、6カ月以内にプラットフォームへ異議申し立てができる。放送メディア通信審議委員会の紛争調整部に紛争調整を申請することも可能だ。ただし、同委員会は情報の虚偽・操作性そのものを審議するのではなく、プラットフォームの措置に手続き上の問題があったかどうかを確認する。
コンテンツが実際に虚偽・操作情報に当たるか、損害賠償責任を負うかどうかの最終判断は裁判所が担う。一般の損害賠償、加重損害賠償のいずれについても、確定には裁判所の判決が必要となる。
◆通報があればすぐ削除されるのか
直ちに削除されるわけではない。通報者は、対象情報の具体的な位置情報(URL)、通報内容とその理由、証拠資料、連絡先、氏名を記載して通報しなければならない。
プラットフォームは通報を受理した事実を通報者に通知したうえで、自社の運営ポリシーに基づき違反の有無を検討し、削除、遮断、アカウント停止などの措置が必要かどうかを判断する。措置を講じる場合は、その理由と異議申し立て手続きを通報者と掲載者の双方に通知しなければならない。
◆政府が直接検閲するのか
政府はこれを否定している。放送メディア通信委員会は、虚偽・操作情報を放送メディア通信審議委員会の審議対象から除外することで表現の自由に配慮し、該当性の判断はプラットフォームが自律ポリシーに基づいて行う仕組みにしたと説明している。
また、透明性センターはファクトチェック団体に対して行政・財政支援を行うものの、テーマの選定や手続き、検証内容には関与しないというのが政府の立場だ。
◆処罰や賠償の対象はどう区分されるのか
大きく3つに分かれる。一般の損害賠償は、故意または過失で虚偽・操作情報を流通させ、他人に損害を与えた掲載者であれば対象となる。登録者数や閲覧数などの要件は設けられていない。
加重損害賠償と課徴金には、それぞれ別の要件が適用される。加重損害賠償の対象は、直前3カ月間に3件以上の情報を掲載して広告などの収益を得た者のうち、登録者数が10万人以上、または月平均閲覧数が10万回以上の掲載者だ。要件を満たした場合、裁判所は損害額の最大5倍まで賠償額を認定できる。
課徴金の対象は、直前3カ月間に3件以上の情報を掲載して収益を得た者のうち、裁判所で違法な虚偽・操作情報とする確定判決を受けた情報を2回以上繰り返し流通させた掲載者となる。こちらには登録者数や閲覧数の基準は適用されない。放送メディア通信委員会は最大10億ウォンまでの課徴金を科すことができる。
情報を流通させるプラットフォーム事業者自体は、加重損害賠償の対象にはならない。対象はあくまで掲載者だ。損害の発生は認められるものの、損害額の算定が難しい場合には、裁判所は5000万ウォンを上限として相当額を損害額に認定できる。
◆報道機関の記事も対象になるのか
対象となる。報道機関も掲載者に当たり、虚偽・操作情報を流通させた場合には賠償責任を負う可能性がある。新聞社の自社サイトに限らず、NaverやDaumなどのニュースポータル、YouTube、InstagramなどのSNSチャネルに虚偽・操作コンテンツを掲載した場合も対象となる。
また、掲載者本人が直前3カ月間に3件以上を掲載して収益を得ており、登録者数10万人以上、または月平均閲覧数10万回以上の要件を満たす場合は、加重損害賠償の対象となる可能性もある。
ただし、公益目的の報道である場合や、流通当時に内容を真実と信じるに足る相当の理由があった場合は、加重損害賠償の対象から除外される。
一方で、損害賠償とは別に、プラットフォームが通報を受けたことだけを理由に、報道機関のアカウントや投稿を任意に削除・遮断したり、アカウントを停止したりすることはできない。
◆なぜ論争が続いているのか
裁判所の判断に先立ち、プラットフォームが削除や表示制限を先行して決められるためだ。市民団体や利用者の間では、プラットフォームが法的責任を懸念して投稿を過度に削除し、表現活動を萎縮させるおそれがあるとの懸念が出ている。
国会の国民同意請願サイトには5月26日、「情報通信網法の撤回を求める」請願が掲載された。約1カ月で14万2248人が同意し、請願は今月3日、所管の常任委員会である国会科学技術情報放送通信委員会に付託された。