韓国のウォン・ドル外為市場が6日、24時間取引に移行した。これまで韓国市場の取引終了後に出た海外ニュースや米経済指標は翌朝の相場にまとめて反映される場面が多かったが、今後は夜間でもウォン相場が動く。証券会社にとっては、個人向け両替サービスや外貨リスク管理の体制見直しが課題となる。
ソウル外国為替市場のウォン・ドル取引は、同日午前6時から24時間体制に切り替わった。
従来の取引時間は午前9時から翌日午前2時までだった。今後は、ニューヨークのサマータイム期間中は月曜午前6時から土曜午前6時まで、途切れなく取引する。サマータイム終了後は月曜午前7時から土曜午前7時までとなる。
週末と1月1日を除く韓国の祝日も、ウォン・ドル取引が可能になる。ただし、祝日の決済は銀行営業日ベースで処理する。米ドル以外の通貨の取引時間は、従来通り午前9時から午後3時30分までとした。
今回の制度変更の狙いは、海外材料を相場に即時反映しやすくすることにある。これまでは、米雇用統計や米連邦公開市場委員会(FOMC)、消費者物価指数(CPI)、地政学リスクなどが韓国市場の引け後に発生すると、翌営業日の朝に為替が大きく動くケースが目立っていた。
今後はウォン・ドルのスポット市場が夜間も開くため、こうしたグローバルイベントの発生時点で相場が反応しやすくなる。
韓国政府と韓国銀行は、海外投資家の市場アクセス改善につながるとみている。ニューヨークやロンドンの時間帯でもウォンの調達や両替ができれば、外国人投資家にとって韓国株や韓国債への投資がしやすくなるためだ。政府は今回の措置を、MSCI先進国指数への組み入れに向けた外為市場改革の一環と位置付けている。
証券会社にとって直接の影響が大きいのは、海外株式サービスと外貨預かり金の管理だ。韓国の個人投資家は米国株の取引時間に合わせて夜間に両替する需要がある。外為市場が24時間動けば、概算レートではなく、市場実勢を反映した為替レートを使える余地が広がる。
もっとも、個人向けに実際に24時間の両替サービスを提供するかどうかは各社で対応が分かれそうだ。システム、対顧客向け為替公示、提携銀行との連携、外貨限度管理などの条件が異なるためだ。
夜間の両替需要が増えれば、証券会社の外貨ポジション管理の負担も重くなる。顧客の両替注文がリアルタイムで入るようになれば、各社はドルの持ち高や限度枠をこれまで以上にきめ細かく管理する必要がある。
為替相場が急変した場合は、外貨預かり金や未収金、担保評価、海外株式の決済資金にも影響が及ぶ可能性がある。このため、単なる顧客利便性の向上にとどまらず、リスク限度、ディーリング体制、システム障害への対応、夜間の人員配置まで含めて見直す必要がある。
資産運用業界にも影響は及ぶ。海外株式型や海外債券型のファンド、上場投資信託(ETF)は、為替ヘッジの有無によって為替変動の収益率への反映のされ方が異なる。ウォン・ドル相場が夜間も動くようになれば、海外資産の評価やヘッジコスト、デリバティブポジション管理の重要性は一段と高まりそうだ。
ただ、対顧客レートの算定方式がすぐに24時間型へ全面移行するわけではない。年末までは、午前9時から午後3時30分までの取引レートと出来高を加重平均して算出する現行の市場平均為替(MAR)方式を維持する。
2027年1月1日からは、午後4時時点の時間加重平均為替(TWAP)方式に切り替える予定だ。
当面の焦点は夜間の流動性だ。市場自体は24時間開くものの、韓国の夜間帯に参加者が十分集まらなければ、売買スプレッドが広がり、小口注文でも相場が大きく振れやすくなる。翌朝のギャップ変動は抑えられる可能性がある一方、米経済指標の発表直後などは夜間の変動率が高まる懸念も残る。
金融投資業界では、取引時間の拡大が為替の安定につながるには、銀行、証券会社、海外金融機関、企業などの参加が夜間も十分に増える必要があるとの見方が出ている。外為市場の開放は韓国の資本市場へのアクセス改善につながる一方、金融会社には24時間体制でのリスク管理という新たな課題を突きつけている。
業界関係者は「外為市場が24時間動けば、両替サービスだけでなく、外貨ポジション管理や為替ヘッジ、システム対応まで夜間体制に改める必要がある」としたうえで、「当面は顧客利便性の拡大と同じくらい、内部のリスク管理が重要な経営課題になる」と指摘した。