AI向けに特化したクラウド基盤を提供する「ネオクラウド」市場で、大手企業の参入が相次いでいる。SoftBankに続いてMetaも動きを強めており、スタートアップ主導で立ち上がった市場は、ビッグテックを含む構図へと移りつつある。AWS、Microsoft、Google Cloudが主導してきた既存クラウド市場に、どこまで影響を与えるかが焦点だ。
SoftBank Groupと通信子会社のSoftBankは、来年度から米国企業向けにAI計算資源を貸し出すネオクラウド事業を始める。
Metaも、巨額投資で整備したデータセンターを活用し、クラウドインフラ事業への展開を本格化させる構えだ。自社データセンターの計算能力を外部に貸し出す動きが広がる中、市場の競争軸にも変化が生じている。
こうした流れの中で、NVIDIAもネオクラウド事業者への支援を拡大している。自社GPUを貸し出して収益化する小規模クラウド事業者に対し、財務保証を提供する一方、売上の一部を受け取る仕組みを導入している。
企業向けAI市場では、forward deployed engineer(FDE)の体制整備も加速している。顧客の現場に深く入り込み、導入や運用を支援する人員への需要が高まっており、AWSやMicrosoftもFDE組織の構築に大規模投資を始めた。
このほか、AI業界では各社の新製品投入や提携、資金調達が相次いでいる。
OpenAIは新たなGPT-5.6系モデルとして「Sol」「Terra」「Luna」の3種類を限定公開した。最上位モデルのSolはサイバーセキュリティ向けとしている。あわせて、AIコーディングツール「Codex」関連のハードウェアも7月15日に発売する。
Anthropicは、自社AIチップの開発に向けた初期作業に入った。Samsung Electronicsと製造面での提携を協議しているとの報道もある。加えて、ミドルレンジモデル「Claude Sonnet 5」も投入した。Opus 4.8に近い性能を、より低価格で提供するとしている。
Googleは、画像生成モデル「Nano Banana 2 Lite」を公開した。従来版より高速化し、コストも抑えた点を特徴に挙げている。
Microsoftは、個人向けと法人向けのCopilotを8月に統合する。統合アプリにはAIコーディングツールに加え、追加料金型の新エージェント「Autopilot」が含まれる。
Salesforceは、カスタマーサービス向けAIエージェントの構築・運用負担を軽減する「Agentforce Help Agent」を公開した。課金モデルには、解決件数に応じて料金を支払う「Pay-per-resolution」を採用した。
Metaは、テキストプロンプトから小規模ゲームやインタラクティブアプリを作成できる新アプリ「Pocket」を投入した。ユーザーは他の利用者が作成したコンテンツをフィード上からそのまま実行できる。あわせて、旧型サーバーから取り出したDDR4メモリを新サーバーで再利用し、自社のCXLチップで低遅延に共有する技術「Vistara」も開発した。
Adobeは、LinkedInと共同でマーケター向けのグローバル施策「AI Essentials for Marketers」を展開する。
中国勢の動きも活発だ。Z.aiは、主力モデル「GLM-5.2」向けの無料デスクトップコーディングツール「Zコード」を正式提供した。Cursor、Claude Code、GitHub Copilot、Google Antigravityなどとの競合を想定する。
Meituanは、コードネーム「Owl Alpha」で知られていたAIモデル「LongCat-2.0」を公開した。ベンチマークではSWE-bench Proで59.5点を記録し、GPT-5.5の58.6点を上回った。Terminal-bench 2.1は70.8点、SWE-bench Multilingualは77.3点だった。
DeepSeekは、大規模言語モデルの応答速度を高めるオープンソース技術「DSpark」を公開した。
Kuaishou Technology傘下でAI映像を手がけるKlingは、投資家から約20億ドルを調達した。映画、広告、ソーシャルメディア向けのコンテンツ制作に使うAIモデルを相次いで投入しており、GoogleやRunwayAI、ByteDanceなどと映像AI市場で競争している。
データ・AI分野のMobigenは2日、「2026 Mobigen Media Day」を開催し、ダイナミック・オントロジー基盤のデータ・AIアプリケーションプラットフォーム「Graphio 2.0」を公開した。
AIインフラ企業のDinotysiaは、大規模言語モデルが既読文脈を再計算しないようGPUに保存する一時領域「KVキャッシュ」の圧縮技術に関する論文とソースコードを公開した。
Rebellionsは、AI推論最適化企業のSqueezeBitsを買収する。NPUハードウェアに加え、ソフトウェア最適化と推論サービングまでを単一プラットフォームとして提供する体制への転換を急ぐ。
製造業向けのフィジカルAI企業CarbonSixは、DSC Investment、LB Investment、IMM、KDB、SV Investment、Cotenxia、ASQなど韓国と米国のVCから、総額4000万ドル規模のシリーズA資金を調達した。
フランスの産業オートメーション企業Schneider Electricは、産業向けAI企業Cogniteを31億ドルで買収する。
AI HRテック企業のHuman Consulting Group(HCG)は、自社の給与アウトソーシングサービスに生成AIベースの「年末調整AIチャットボット」を追加した。
Doodlinが運営する採用管理ソリューション「Greeting」は、顧客企業がAIツールに自社の採用データを接続できる「MCP連動機能」の提供を始めた。
Anthropicは、企業向けコミュニケーションプラットフォームSlackにClaude機能を導入する。Microsoftも、Slackと競合するTeamsでClaudeを使える機能を開発中だ。一方でSalesforce社内では、Claudeの取り込みを巡って警戒感も出ているという。
AI利用コストの上昇を背景に、OpenAIやAnthropicに近い性能を持ちながら比較的安価な中国のオープンソースAIモデルを求める企業需要も増えている。
Palantirのアレックス・カープCEOは、AIコストの急増に言及し、AnthropicとOpenAIのトークン課金モデルを批判した。そのうえで、中国のAI開発スピードを業界が過小評価すべきではないとし、多くの企業が汎用モデルではなく、より効率的な独自ツールの構築・学習へと向かっていると述べた。
ロボティクス向けAIモデルの開発競争も激しくなっている。大きくは、大規模言語モデルから派生したVLAと、ロボットの行動に対する現実世界の変化を主に映像から学習するワールドモデルという2つの流れが競り合う構図になっている。