Micronは広島で93億ドル(約1兆4000億円)を投じ、次世代メモリー半導体の生産体制を増強する。2028年夏には、AI向け高帯域幅メモリー(HBM)の量産開始を計画しており、急拡大するAI半導体需要を取り込む構えだ。
米メディアのCryptopolitanが4日(現地時間)に報じた。計画の舞台となるのは広島工場で、日本の経済産業省は同プロジェクトに最大5000億円を支援する方針という。AI時代の基幹部材となる半導体サプライチェーンを国内に取り込み、戦略産業として育成する狙いがある。
HBMは複数のDRAMを垂直に積層し、従来型メモリーを大きく上回る帯域幅と電力効率を実現する。NVIDIAなどのAIアクセラレーターや、LLMの学習用サーバーに使われる主要部材で、AIインフラの拡大を背景に需要が急伸している。Micronに加え、SK hynix、Samsung Electronicsも増産と次世代品への移行を急いでいる。
市場シェアを巡る競争も激しい。Counterpoint Researchによると、直近の集計で世界HBM市場はSK hynixが約57%で首位、Samsung Electronicsが22%、Micronが21%だった。Samsung Electronicsは次世代HBM4Eのサンプル供給とHBM5の開発を並行して進めており、SK hynixも電力効率を高めた12段HBM4Eを主要顧客に供給し、首位維持を狙う。
こうした中で、Micronの広島投資は単なる増産投資にとどまらない。AI半導体メーカーが製品投入の数年前からメモリー調達契約を結ぶ例が増えており、長期的な供給力そのものが競争優位を左右するためだ。Micronは新たな生産体制を通じ、主要AI企業との供給契約拡大を目指す。
AIメモリー事業の成長も鮮明になっている。Micronの2026会計年度第3四半期の売上高は414億6000万ドル(約6兆2200億円)で、前年同期の93億ドル(約1兆4000億円)から大きく増加した。サンジェイ・メフロトラCEOは、AIの普及がメモリー産業の戦略的価値を大きく押し上げているとの見方を示した。
Micronは投資計画の発表に先立ち、AIスタートアップのAnthropicとの戦略提携も打ち出した。両社はメモリーアーキテクチャの共同開発と長期供給契約を進めるほか、MicronはAnthropicのシリーズH投資にも参加した。Anthropicの共同創業者で最高コンピューティング責任者(CCO)のトム・ブラウン氏は、メモリーとストレージがAIモデル「Claude」の学習とサービス効率を左右する中核要素だと説明している。
日本政府も今回の投資を国家戦略の一環として位置付ける。日本は半導体材料や製造装置で競争力を保ってきた一方、最先端のAIメモリー生産基盤は相対的に手薄だった。広島工場が本格稼働すれば、国内でAI向けHBMを生産できる体制が整う。政府が支援するRapidusやTSMCの案件とあわせ、先端半導体エコシステムの構築も加速する見通しだ。
Micronは米国、日本、台湾、シンガポールなどに生産拠点を分散している。AI半導体需要が急増するなか、広島工場はサプライチェーンの安定確保とHBM市場でのシェア拡大を支える中核拠点となる公算が大きい。