MSIは、中国のDRAMメーカー長鑫存儲技術(CXMT)のチップを搭載したDDR5メモリ向けに、高クロック動作をサポートするベータBIOSを公開した。中国製DDR5メモリが主要マザーボードでDDR5-8000超の動作を実現した例が確認されたことで、サムスン電子、SK hynix、Micronが主導してきたPC向けメモリ市場に新たな供給先が加わる可能性が注目されている。
海外メディアGigazineによると、MSIは7日、AMDマザーボード向けのベータBIOSでCXMTベースのDDR5メモリの高速動作を検証した。中国で先行配布された今回のBIOSでは、デュアルDIMM構成でDDR5-8200、4枚挿しのクアッドDIMM構成でDDR5-7200の動作が確認されたという。グローバル向けBIOSは現時点で公開されていない。
今回の動きは、単なるBIOSアップデートにとどまらない。PC向けDDR5市場はこれまで、サムスン電子、SK hynix、Micronの3社が事実上けん引してきた。とりわけMicronが昨年末、消費者向けメモリ・ストレージ事業からの撤退を表明して以降、DDR5価格は高止まりしており、新たな供給元の必要性が指摘されていた。
CXMTは2016年設立の中国メモリメーカーで、8000Mbps級のDDR5メモリ開発を進めてきた。一方、同社の消費者向け製品については、グローバル市場向けマザーボード環境で安定動作が確認された例が多くなかった。MSIによる今回の検証は、中国製DDR5がPC市場で互換性と性能の両面で評価を得始めたことを示す事例と受け止められている。
公開資料には、ハードウェア情報ツール「HWiNFO」とメモリ安定性テストツール「MemTest」による検証結果も掲載された。KingBankの24GB DDR5モジュールは、製造元が「CXSH」と表示され、DDR5-8200環境でエラーなくテストを通過したとされる。
LexarのCXMTベースDDR5メモリでも、DDR5-8000での動作事例が示された。特定メーカーに限らず、複数ブランドがCXMT製チップを採用している点も確認された。
もっとも、価格面で直ちに優位に立つわけではない。報道によれば、CXMTベースのDDR5製品は、サムスン電子、SK hynix、Micron製品と比べて際立って安い水準にはないという。このため、短期的には価格競争よりも、供給量の拡大やサプライチェーン多様化の面での意義が大きいとの見方が出ている。
地政学リスクも残る。CXMTは米国防総省の中国軍事企業リストに含まれており、対中半導体規制の対象企業の一つとみられている。一方で、Appleがメモリ調達先の多様化に向け、CXMT製品の購入許可を米政府に求めたとの報道もあり、グローバル供給網再編の可能性が取り沙汰されている。
業界では、MSIのベータBIOS対応が中国市場にとどまらず、グローバル製品にも広がるかどうかに関心が集まっている。今後、CXMTが価格競争力に加え、安定供給能力と互換性を証明できれば、消費者向けDDR5市場でサムスン電子、SK hynix、Micron以外の新たな選択肢として存在感を高める可能性がある。