製造DXを巡り、IT企業と産業自動化を主戦場とするOT(運用技術)企業の競争が激化している。そうした中、PLC(Programmable Logic Controller)などで知られるRockwell Automationは、デジタルツイン、データ活用、セキュリティを自社で強化し、主力の産業自動化製品と統合して提供する方針を示している。
IT企業はデジタル技術を武器にOT領域へ急速に進出している。一方、OT企業は生産現場への理解を強みに、IT企業との差別化を図る構図だ。
Rockwell Automation Koreaのパク・ビョンジュン理事は、「製造業のデジタル化は、ITに詳しいだけでは十分に対応できない。OTを深く理解してこそ効果が出る」と話す。OTの専門性を基盤にIT領域へ拡張していくことが、競争力の源泉になるとの見方だ。
OTへの理解があれば、デジタル化の過程で設備にどのような影響が及ぶかを事前に見極めやすい。入力条件の変化が現場に与える影響も把握しやすく、導入時のリスク低減につながるという。
同氏によると、Rockwell Automationのデジタル戦略は「デジタルツイン」「データ分析」「セキュリティ」の3分野に整理できる。
デジタルツインでは、PLCが制御する製造設備を仮想環境上に先行して構築し、シミュレーションを通じて異常の有無を確認できるようにする取り組みを進めている。
同氏は、買収によって取得したEmulate3Dについて、「産業自動化向けのデジタルツインソリューションで、Rockwell Automation製PLCだけでなく他社製品にも対応する。シミュレーションとエミュレーションの両方をカバーできる」と説明した。
シミュレーションが仮想環境での検証を指すのに対し、エミュレーションは実機の動作段階まで視野に入れた検証を含む。時間を要する場合はあるものの、相対的に高い精度を見込めるとしている。
また、Emulate3Dは自社設備専用の製品ではなく、独立したデジタルツイン基盤である点も強調した。他社製PLCを採用する企業での導入事例も少なくないという。
活用範囲は設備のデジタル化にとどまらない。パク理事は「デジタルツインで得た情報は、保守や従業員教育にも活用できる」と述べた。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)機器を使って仮想画面と実際の現場を連携させ、保守業務に生かすことも可能だとしている。
データ収集と分析も、Rockwell Automationが投資を拡大している領域だ。これまで製造現場の設備は相互接続されていないケースが多かったが、MES(製造実行システム)の普及に伴い、設備間連携の重要性が高まっているという。
接続された設備からデータを収集し、AIで分析できるよう支援する動きも業界全体で加速している。
Rockwell AutomationはMESに加え、「FactoryTalk」ブランドでデータソリューション群の拡充を進めている。データ保存向けの「FactoryTalk Historian」、画面構成を担う「View」、資産管理を支援する「AssetCentre」、分析ツールの「Mosaic」などを展開する。
パク理事は「MESを実現するには、設備が接続され、データを収集・分析できることが前提になる」と指摘する。工場には多様なデータが存在し、Historianのデータだけでなく、ERPや他社ソフトウェア上のデータも取り込む必要があると説明した。
「Mosaic」は、こうした各種データをマッピングし、意味のある情報として抽出する用途を想定しているという。
AI分野では、OT向け機能の拡充も進める。現場データを活用できるLLM基盤「Atlas AI」のほか、マシンビジョンソリューション、AIベースの予知保全ソリューション「Guardian AI」、コントローラデータを基に機械学習モデルを自動生成する産業向けAIソリューション「Logix AI」も提供している。
パク理事は「Logix AI、Vision、Guardian AIは、顧客が外部ベンダーの支援なしに現場へ適用できる」と述べた。
設備の接続が進む中、セキュリティは製造現場のデジタル化における重要テーマになっている。Rockwell Automationもセキュリティプラットフォーム「Secure OT」を前面に打ち出し、OTセキュリティ市場の開拓を進めている。
最近では、「OT Cybersecurity Assessment Suite」「Secure OT Platform Managed Services」「Managed Secure Remote Access(MSRA)」も投入した。セキュリティ分野でも、OTの専門性を軸にした戦略を展開する。
パク理事は「Rockwell Automationは2008年からOTセキュリティに取り組んできた。ハードウェアとソフトウェアには、基本的にセキュリティ機能を組み込んで提供している」と話した。
また、「Secure OTのOSはパッチ管理機能を提供する。現場のPCは10年、20年と長期運用されることが多いが、OTへの理解を前提に、生産へ影響を与えない形でパッチ更新を進められる点が強みだ」と説明した。
同社によると、韓国企業の間では最近、Rockwell Automationのエネルギーモニタリングシステムへの関心も高まっている。
パク理事は「Rockwell Automationのソリューションは、電気、ガス、圧縮空気、水、蒸気の5つのエネルギー源をモニタリングする。ESGとも関係が深く、国策資金の対象にもなり得るため、関心を示す韓国企業が増えている」と述べた。