ヒューマノイドロボットの実用化に向けた期待が高まる一方、市場拡大には拙速な投入ではなく、段階的な現場導入が必要だとの見方が強まっている。米TechRadarは6日(現地時間)、ヒューマノイド産業は将来的に自動車やコンピューティングに匹敵する市場へ成長する可能性があるとしつつも、技術、コスト、規制の面でなお多くの課題を抱えていると報じた。
同メディアは、実用化の成否を左右するのは開発スピードそのものではなく、導入の進め方だと指摘した。開発戦略として「Crawl, Walk, Run」を挙げ、十分な検証を経ないまま現場に投入するのではなく、機能を段階的に積み上げながら完成度を高める必要があるとした。
その理由として、デモ映像で示される性能と、実際の作業環境で求められる能力との間に依然として大きな隔たりがある点を挙げた。未成熟な技術を現場に急いで持ち込むのではなく、現場で使える機能を着実に積み上げることが重要だとしている。
技術面で最大の課題の一つとされたのが、歩行とバランス制御だ。強化学習やアクチュエーター技術の進展によって、制御された環境では歩行や走行、さらにはパルクールまで可能になりつつある。しかし、工場や物流現場では凹凸のある床面や障害物、滑りやすい場所が混在しており、安定して移動するのはなお容易ではない。
手先の精密制御も実用化を左右する要素とされた。人間の手は27の自由度を持ち、繊細な力加減や触覚への対応が可能だが、現状のヒューマノイドの手は精密作業の面でなお不十分だ。針に糸を通す、卵を割らずにつかむ、飛んでくるボールを受けるといった、人には自然な動作もロボットにとっては難題として残っている。
一方で、フィジカルAIの進展により、研究室の実験段階を超え、実機で物をつかんで運ぶ作業は徐々に安定してこなせるようになってきたとも評価した。
認知能力の統合も大きな課題だ。ヒューマノイドは変化する環境の中で、人と障害物を識別し、危険要因をリアルタイムで判断しなければならない。現在のAIは個別の機能では高い性能を示しているものの、それらを一つの安定したシステムとして統合する段階にはまだ至っていないという。
経済性も普及の壁として挙げられた。一部企業は低価格モデルを打ち出しているが、TechRadarは現行製品の中には実用機というより「高価な玩具」に近いものもあると指摘した。逆に産業向けの上位モデルは数十万ドルに達し、1ドル=約150円換算では数千万円規模となる。人手で担える業務を置き換えるには、依然として負担が大きい水準だ。
量産による価格低下への期待はあるものの、生産性とコスト競争力を同時に満たす2万〜3万ドル水準のヒューマノイドがいつ登場するかは見通せないとした。日本円では約300万〜450万円に相当する。
RaaS(Robot as a Service)も代替案として取り上げられた。初期導入費を抑えられる利点はあるが、長期的な運用費や保守費の問題を根本的に解決する手段にはならないとみている。
規制と社会受容も乗り越えるべき課題だ。長時間にわたり人の介入なしで安全に作業できるかを検証する制度や安全基準は、なお十分に整備されていない。自動化の拡大に対する社会的な反発も、市場拡大を左右する要因になり得るとした。
それでも、業界ではヒューマノイド実用化の方向性そのものは変わらないとの見方が主流だ。TechRadarは、箱詰めのような単純な反復作業であっても、現場データが蓄積されれば技術進化の速度はさらに高まるとみている。
最終的に競争力を左右するのは、派手なデモ映像ではなく、実際の作業環境でどれだけ安定して反復業務をこなし、コストを下げられるかだという。産業現場で早期に経験を積んだ企業が、技術標準と市場の主導権を握る可能性が高いと分析した。