AI競争で計算資源の確保が課題となっていることを示す事例となった。写真=Google

Googleが自社のAIモデル「Gemini」の提供量を制限したことで、Metaの一部AIプロジェクトに中断や遅延が生じていることが分かった。AI開発競争ではモデル性能だけでなく、計算資源の確保そのものが競争力を左右する局面に入っている。

GIGAZINEが6月29日付で報じたところによると、MetaはGoogleのGeminiを活用した社内AIプロジェクトを進めていたが、Google側で十分な計算資源を確保できず、開発スケジュールに影響が出ているという。

問題は今年3月ごろに始まり、6月末時点でも一部プロジェクトに影響が続いているとされる。MetaとGoogleはGeminiの利用契約を結んでいたものの、Googleの供給能力がMetaの需要に追い付かなかったため、Geminiの大規模な計算能力を前提に設計された社内プロジェクトの一部が遅延したという。

影響はMetaの社内運用にも及んでいる。MetaはAI運用コストの削減を進める一方、社内ではAIトークンをより効率的に使うよう指針を示したとされる。計算資源の不足が、利用制限にとどまらず、開発日程やコスト管理にも波及した格好だ。

こうした制限はMetaに限った話ではないとの見方もある。事情に詳しい関係者によると、Googleの他の顧客にも一定の利用制限がかかっているが、Metaほど大きな影響は出ていないという。MetaはGoogleのAIモデルを特に積極活用している顧客の一つであり、その分、影響も大きくなったとみられる。

今回の事例は、急成長するGoogleのクラウド事業の現状とも重なる。Googleは今年4月の決算発表で、クラウド部門の売上高が初めて200億ドル(約3兆円)を超えたと明らかにした。あわせて、未履行のクラウド契約残高も前四半期比でほぼ2倍となり、4600億ドル(約69兆円)超に達したとしている。

一方、大口顧客のAI需要は想定を上回るペースで増えており、チップやデータセンター、電力といったインフラ整備が追い付いていないとの分析がある。

Googleも計算資源の確保を急いでいる。6月にはSpaceXと契約し、追加の計算資源を確保したと報じられた。AIサービス拡大に向け、外部インフラの活用を広げているとみられる。

MetaもAI競争力の強化を急ぐ。同社はAMDやNVIDIAなど半導体企業との協業を拡大し、「Personal Superintelligence」戦略を推進している。自社のAI能力を引き上げると同時に、外部の計算資源確保にも積極的に投資する姿勢を示している。

業界では今回の事例について、AI産業が新たな段階に入ったことを示すものとの受け止めが出ている。従来はモデル性能や機能が競争の中心だったが、今後は計算資源やデータセンター、電力をどれだけ安定的に確保できるかが、競争力を左右するとの見方だ。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、Googleが大口顧客のAIモデル利用量に上限を設けた今回のケースについて、AI産業全体のインフラ制約を示す異例の事例だと報じた。巨額の資金がチップやデータセンター、電力設備に投じられているにもかかわらず、ビッグテックでさえ急増するAI需要に対応する計算資源の確保に苦戦しているという。

このため、AI産業の競争はモデル開発そのものから、インフラ確保を含む総力戦へと移りつつある。Metaのプロジェクト遅延が一時的な供給不足にとどまるのか、それともAI計算資源の配分を巡る構造的な問題へ発展するのかが、今後の焦点となりそうだ。

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