暗号資産ベースの予測市場Polymarketで、ワールドカップ関連の試合市場を巡り、本命国の勝利に資金を投じたトレーダーが相次いで損失を計上している。14日に行われたスペイン対カーボベルデ戦は0-0の引き分けに終わり、スペイン勝利の契約は失効した一方、「スペインが勝たない」側に張った参加者は約900万ドルの利益を得た。
ブロックチェーンメディアのCryptoSlateが17日、こうした取引動向を報じた。スペイン勝利を見込んだポジションは試合終了とともに価値を失ったのに対し、引き分けの可能性まで織り込んだ新規ウォレットが短期間で大きな収益を上げたという。
市場で注目を集めたのは「fishalive」と名乗るアカウントだ。2026年6月にPolymarketへ参加した後、取引は2件のみで、「スペインが勝たない」契約から470万ドル、カーボベルデ+2.5のスプレッド契約から850万ドルを受け取った。投下資金は約40万ドルだったが、純利益は900万ドルに達した。
一方、スペイン勝利に賭けた側は大きく崩れた。「betoor619」と名乗るトレーダーは、市場がスペイン勝利の確率を約92%織り込む中で約100万ドルを投じたが、見込める利益は8万5000ドルにとどまっていた。結果は引き分けとなり、投じた資金は全額失われた。
数日前にも、別の参加者がスペイン勝利に100万ドルを投じ、108万5943ドルの受け取りを見込んでいたポジションが同じ試合で失効した。カーボベルデはアディショナルタイムまで耐え抜き、ワールドカップ史上初の勝ち点を手にした。
同様の損失は翌日も生じた。Inc.が報じたところによると、トレーダー「FlickRaw」はオランダ対日本戦のオランダ勝利に270万ドル、ベルギー対エジプト戦のベルギー勝利に150万ドルを投じたが、計420万ドルの損失となった。日本は88分の同点弾を含め2度追い付き2-2、ベルギーもエジプトと1-1で引き分けた。
ベルギー戦では、大会でも最大級の単発ポジションの1つも失効した。「leeeroyjenkins」はベルギー勝利に860万ドルを投じ、的中すれば1310万ドルを受け取る見通しだったが、引き分けでポジションは消滅した。Polymarket Sportsも試合中に「エジプトが前半を1-0でリード」と投稿し、その後、最終結果が引き分けとなったことで当該契約が失効したことを確認した。
背景には、サッカーの試合市場に特有の契約構造がある。勝利のみを対象とする契約は、引き分けになった時点で価値がゼロになる。これに対し、「fishalive」が取った「スペインが勝たない」やカーボベルデ+2.5のようなポジションは、引き分けでも利益が出る設計だった。
PolymarketのW杯優勝予想市場の取引額は24億6000万ドルに達した。フランスが約17.6%で首位、スペインが約13.9%、ポルトガルとイングランドがそれぞれ約10.8%、約10.5%で続く。契約は7月20日前後に終了する見通しで、2026年W杯を巡る全362のアクティブ市場の取引高は25億ドルを超えるとみられている。スペイン対カーボベルデ戦だけでも約6400万ドルが取引された。
こうした中、市場価格も大きく変動した。Goldman Sachsの大会前モデルはスペインの優勝確率を26%、フランスを19%と見積もっていたが、実際の市場ではカーボベルデ戦後にフランスが再びスペインを上回った。優勝予想市場には各代表への市場心理が反映される一方、個別試合の契約は約90分で決着するため、損益が即座に可視化されやすい構造にある。
規制面の不透明感も残る。米商品先物取引委員会(CFTC)は6月10日、予測市場に対する連邦レベルの監督枠組みを明確にする規則案を公表した。規則案は、スポーツ関連契約が価格発見に資する可能性に言及する一方、州政府、部族政府、ゲーム産業は反対している。米国ゲーム協会の調査では、米国人の85%がこうした契約を賭博とみなしている。
スペインでも5月末、ライセンス不備を理由にPolymarketとKalshiへのアクセスが一時遮断された経緯がある。これを受け、W杯予測市場は単なる取引規模の競争にとどまらず、匿名ウォレットによる大型取引やスポーツブック並みの賭けを金融デリバティブとして扱うべきかどうかという論点にも発展している。
現時点で、「fishalive」が構造的な価格のゆがみを先回りして捉えたのか、それとも幸運だったのかは確認されていない。ただ、今回のW杯試合市場では、本命勝利に傾いた資金が、引き分けを含む反対側のポジションへ素早く移る構図が鮮明になった。
Polymarket上では、「当日アカウントを作成したトレーダーが、カーボベルデ+2.5に379万ドル、『スペインが勝たない』に42万7000ドルを投じ、900万ドル超を稼いだ」とする投稿も拡散している。