米政府が、Google親会社Alphabetから分社した米AI・量子技術企業SandboxAQに5億ドル(約750億円)を投じる。あわせて米商務省は同社の少数株も取得する見通しだ。
Cryptopolitanが17日(現地時間)に報じたところによると、資金は米国内の半導体工場で使用する化学材料の開発に充てられる。
今回の支援は、ドナルド・トランプ大統領が半導体支援法の研究資金を活用して進める施策の一環とされる。米政府はこれまでにも、半導体製造装置に1億5000万ドル(約225億円)、量子コンピューティング分野に20億ドル(約3000億円)を振り向けてきた。
SandboxAQは2025年4月時点で企業価値が57億5000万ドル(約8625億円)と評価されている。累計調達額は10億ドル(約1500億円)を超え、NVIDIAも投資家に名を連ねる。
狙いは、半導体サプライチェーンの脆弱性を減らすことにある。米商務省は、米半導体企業が不足やボトルネック、海外供給先への依存リスクに直面している分野で、早期に実用化できる成果を求めているという。
これを受け、SandboxAQは半導体製造工程で使うPFASの代替物質や性能向上材料の探索を進める。あわせて、チップ製造プロセスの化学反応速度を高める触媒の開発にも取り組む。製造装置向けの永久磁石や電池に使うレアアースについても、中国など海外供給源への依存を減らす、もしくは代替する方策を課題に据えている。
同社はこれまで、物理データと実験結果を基に、科学分野の課題解決に特化したAIモデルを開発してきた。人間の文章やソフトウェアコードを学習するのではなく、実験室の測定値や物理データを活用する点を特徴としている。
この手法は、一般的なチャットボットでは扱いにくい課題に向くと同社はみている。生命工学の設計や、GPSに依存しない量子航法装置の開発にも同様のアプローチを適用してきたという。
出資条件も注目される。米商務省は今回の取引を通じてSandboxAQの少数株を取得する。
ジャック・ヒデアリー最高経営責任者(CEO)は、政府が取得する持分の規模を明らかにしていない。一方で、その持分に議決権はなく、連邦政府が取締役会の席を得ることもないと説明した。
一方、米政府の対中技術規制の運用は別の流れをたどっている。DeepSeekやメモリー半導体メーカーのCXMTを含む100社超の中国テック企業は、国家安全保障上の懸念先と位置付けられたが、商務省の取引制限リストであるエンティティ・リストには現時点で掲載されていない。
これらの企業は昨年、省庁間審査を通過したものの、リスト公表には至っていないという。
産業安全保障局(BIS)は、エンティティ・リストを含む複数の政策・執行手段を日常的に活用し、悪意ある行為者に対応していると発表した。
これに対し中国外務省は、経済・通商・技術問題の政治化、道具化、武器化をやめるよう米国に求めた。リン・ジェン報道官は、国家安全保障概念の拡大解釈や、エンティティ・リストなど輸出管理措置の乱用に中国は一貫して反対してきたと述べた。
米中対立が続くなか、今回のSandboxAQへの出資は、規制強化よりも産業育成に軸足を置いた措置と受け止められている。米国は半導体材料・装置の中核サプライチェーンの国内回帰を進める一方、中国は半導体、自動車、防衛産業に欠かせないレアアース供給で依然として大きな影響力を保っている。
そうしたなかで、米政府が直接持分を確保し、材料開発に資金を投じる今回の判断は、半導体製造基盤の強化を目指す動きの一環とみられる。