SpaceXはIPOに向けて提出したS-1登録書類で、StarshipやStarlink、AI関連投資、宇宙データセンターに至るまでの中長期計画を明らかにした。今後数年の主要事業の節目が示されたことで、事業拡大の実現性に市場の関心が集まっている。米Business Insiderが21日(現地時間)に報じた。
焦点の1つは、次世代再使用型ロケット「Starship」の実用化時期だ。SpaceXは、2026年後半に実際のペイロードを搭載した軌道輸送ミッションを開始する見通しを示した。Starshipは現在も試験飛行段階にあり、次回のテスト打ち上げは22日に予定されている。
登録書類では、Starshipを単なる打ち上げ機ではなく、SpaceX全体の事業構造を支える基盤と位置付けた。次世代Starlink衛星に加え、宇宙ベースのデータセンターもStarshipで打ち上げる計画としている。大規模なAI向けコンピューティング衛星事業についても、Starshipの完全再使用が実現して初めて採算性が見込めると説明した。
次世代Starlinkの計画も具体化した。SpaceXは、V3ブロードバンド衛星が1機当たり1Tbps規模のダウンロード処理能力を持つと見込む。2026年後半からStarshipを使ってV3衛星を投入する計画で、S-1には1回の打ち上げで最大60機を低軌道に投入できると記載した。
Starlinkは現在、SpaceXにとって最大のキャッシュ創出事業とされる。一方で、宇宙ベースのAIコンピューティングやデータセンター事業には巨額の資本投資が必要となる。このため、Starshipの開発進捗がSpaceX全体の収益構造や投資計画を左右するとの見方が出ている。
AI関連投資の計画も盛り込まれた。SpaceXは4月、AIコーディングのスタートアップ「Cursor」を600億ドル規模で買収する権利を確保したと明らかにしていた。買収を見送る場合は、約100億ドルの違約金を負担する必要があるという。
今回の登録書類では、上場から7日経過した時点と2026年9月30日のいずれか早い日を起点とし、その後30日以内に最終的な買収実行の可否を決める条件が記載された。
スマートフォン直接通信サービス「Starlink Mobile」の計画も示した。SpaceXは2027年にStarshipでV2衛星を投入する予定としている。ただし、周波数利用権の確保や規制当局の承認、Starshipの開発進捗に左右される見通しだ。
EchoStarとの契約も重要な変数として挙げた。契約が完了すれば、Starlink衛星を通じてスマートフォン向けの直接ブロードバンド接続サービスを提供できるようになる。米連邦通信委員会(FCC)は5月に関連取引を承認しており、SpaceXは2027年11月30日の取引完了を見込むという。
財務面では、XおよびxAI関連の借入金返済に充てるため、200億ドルを調達したことも開示した。満期は2027年9月で、2028年3月まで延長できるオプションが付く。
衛星通信と宇宙事業による収益を基盤に、AI分野への大型投資を支える構図も浮かび上がる。
最も長期の計画は、宇宙ベースのデータセンター構想だ。SpaceXは、太陽光発電を活用する軌道上データセンターを早ければ2028年から投入できるとの見通しを示した。ただ、これもStarship開発の成否に大きく依存する。
S-1全体を通じて繰り返し強調されたのは、次世代Starlinkの投入からAI衛星、宇宙データセンターに至るまで、主要事業の多くがStarshipの再使用体制確立と一体で進むという点だ。
市場では、S-1で示されたSpaceXの計画がかなり強気な内容だとして注目を集めている。イーロン・マスクは2020年に「時間をぴったり合わせるのは得意ではないが、最終的にはやり遂げる」と述べていた。Business Insiderは、今回の上場関連書類について、そうした発言どおり事業拡大が綿密な期限設定の上に組み立てられていることを示したと評価している。