Samsung ElectronicsとSK hynixのHBM4E(第7世代の高帯域幅メモリ)を巡る投入スケジュールに差が出てきた。Samsung Electronicsは2026年第2四半期の初回サンプル出荷を打ち出した一方、SK hynixは下期のサンプル供給後、2027年の量産を目標に掲げる。両社とも10ナノ級第6世代の「1c」プロセスを採用するが、競争軸は性能訴求と量産安定性に分かれている。
Samsung Electronicsは4月30日の2026年第1四半期決算説明会で、HBM4Eの開発日程と仕様を公表した。同社は、ピン当たり16Gbps、帯域幅4.0TB/sに対応する次世代HBM4Eについて、事業化準備を加速しており、第2四半期中に初回サンプルを出荷する計画だと説明した。
特徴は、性能目標を具体的な数値で示した点にある。Samsung Electronicsは、HBM4量産で蓄積した先端プロセス技術を基盤に、次世代製品の準備を進めているとしている。
一方、SK hynixは異なる切り口で日程を示した。同社は、主要顧客と初期段階から緊密に協業しており、下期にサンプルを供給した後、2027年の量産開始を目標に準備を進めていると明らかにした。
サンプル供給の時期だけを比べれば、SK hynixはSamsung Electronicsより1〜2四半期遅い。ただ、SK hynixが量産時期を2027年と明確に示したのに対し、Samsung Electronicsは量産開始時期を公表していない。
一般に、サンプル供給から量産立ち上げまでには、顧客認証や歩留まりの安定化に一定の時間がかかる。このため、サンプル出荷の早さがそのまま量産時期の差に直結するとは限らず、両社の量産時期が2027年前後に近づく可能性もある。
プロセス面では、両社ともHBM4Eの中核技術として1cプロセスを前面に押し出している。もっとも、差別化の軸は同じではない。Samsung Electronicsは性能仕様そのものを強く訴求している。
同社はHBM4についても、1ナノ世代の先端プロセスを活用し、性能仕様の引き上げを主導したと説明してきた。顧客がこれを採用し、高性能が価格プレミアムにつながる構図を見込んでいるという。HBM4Eでも16Gbps、4.0TB/sという具体的な数値を先行して示し、同じ戦略を続ける格好だ。
これに対し、SK hynixは量産安定性とベースダイ最適化を差別化ポイントに挙げる。同社は決算説明会での質疑で、ベースダイの最適化と、業界最高水準の性能を実証した1cナノメートルプロセスの適用が中核だと説明した。そのうえで、成熟段階に入った1c量産能力を基に、HBM4とHBM4Eでも安定した性能と供給量を適時に提供し、技術リーダーシップを維持する方針を示した。
ベースダイはHBMスタックの最下層に配置され、メモリコントローラーの役割を担う。最適化の度合いによって、HBM全体の電力効率や信号処理性能が左右されるため、SK hynixは性能数値よりも量産段階での安定供給力を強みとして打ち出している。
HBM4の初期市場をどれだけ確保できるかも、HBM4E競争の出発点を左右しそうだ。Samsung Electronicsは2月、業界で初めてHBM4の量産出荷を開始した。HBM4の売上高は2026年第3四半期にHBM売上高全体の過半を占め、通年でも半分を超える見通しという。同社は、準備した生産能力はすべて販売済みだと説明した。
SK hynixもHBM4段階で需要を確保している。同社は、今後3年間に顧客から求められている需要は、すでに自社の供給能力を大きく上回っていると述べた。HBM4Eを含む向こう3年分の需要が、現時点で生産能力を超えていることを意味する。
両社に共通するのは、HBM4の段階から需要が供給を上回る状況が続いている点だ。次の焦点は、生産能力の拡張をどれだけ早く進められるかに移りつつある。
SK hynixは、龍仁第1期ファブの稼働時期を2027年5月から同年2月へ3カ月前倒しする方針を決めた。同社は、現時点で龍仁以外の追加建設計画はないとしつつ、AI時代の構造的な需要増に柔軟に対応できるよう、生産インフラの整備を綿密に進めるとした。
Samsung Electronicsも、2027年分の需要はすでに先行受注されている状況だとして、今後の生産能力拡大の必要性をにじませた。HBMはDRAMの生産能力を増やしても、後工程のパッケージングライン確保に別途時間を要する。このため、増産投資の意思決定時期が2027年以降の市場シェアを左右する要因になるとみられる。
Micronを含む海外メモリ各社のHBM4E投入時期も変数となる。ただ、両社の決算説明会では、競合他社のスケジュールに対する直接的な言及はなかった。
HBM4Eが本格量産局面に入る2027年は、メモリ大手2社の次世代HBMシェアを占う節目になりそうだ。Samsung Electronicsがサンプル出荷の前倒しをテコに初期顧客の獲得で優位に立てるか、それともSK hynixが量産安定性を武器に本格量産段階で差を縮めるか。業界では、HBM4Eの成否次第でメモリ技術の勢力図が改めて塗り替わる可能性があるとの見方が出ている。