中国が、政府支援の訓練拠点を軸にヒューマノイドロボットの実用化を加速している。デモや娯楽用途にとどまらず、工場やサービス業の現場で稼働する産業用途のロボットとして育成する構えだ。
CNBCが21日(現地時間)に報じたところによると、北京のヒューマノイドロボット向けデータ訓練センターでは、ロボットが工場作業や家事、店舗の商品整理、金属の補修作業などを繰り返し学習し、実運用に備えている。
同施設は北京市の支援を受ける訓練センターで、中国各地で整備が進むヒューマノイドロボット訓練ネットワークの一角を担う。中国は電気自動車やAIに続く次世代の戦略産業としてヒューマノイドロボットを育成し、2030年までに世界市場とサプライチェーンで主導権を握ることを目標に掲げている。
現場では指導員がカメラやモーションキャプチャー機器、遠隔操作装置を使い、ロボットに同じ動作を繰り返し学習させている。RealMan Intelligent Technologyのケネス・レンは「ロボットが自律的に判断できるよう訓練している」と述べた。
重視されているのは、動作の再現そのものより学習データの蓄積だ。指導員がロボットの動きを直接制御する過程で得られたデータは、AIの学習に活用される。指導員のプディ・ルオは「初期段階ではロボットに認識能力がなく手動操作が必要だが、反復データが積み上がれば、その後は自ら作業できるようになる」と説明した。
訓練対象の業務も広がっている。工場の生産ラインでの仕分け作業に加え、家事、マッサージ、店舗の商品整理、金属補修まで含まれる。現場関係者によると、指導員の一部は1日8時間にわたり同じ動作を繰り返し、データを収集しているという。
ロボットハンド開発を手がけるBeijing Inspire-Robots Technologyは、同じキャンパス内でセンサーとモーション追跡技術を用いた精密動作の学習を進めている。同社の取締役会書記ウィンストン・ジョウは「新しい技術を1つ習得するのに、ロボットハンドは平均で1万回以上の訓練を必要とする」と語った。開発済みのロボットハンドは、卵や小さな物体をつかみ、ひもを持ち上げられる段階まで進んでいるという。
中国のヒューマノイド戦略は、すでに実験室の段階を超えつつある。AIを活用したロボットの一部は、飲食店のシェフやバーテンダー、ウエイター、交通警察、小規模店舗の運営といった役割で試験運用されている。ただ、多くのロボットはいまだ人の補助に依存しており、完全な自律作業の実現にはなお時間がかかるとの見方もある。
こうした中国の急拡大は、世界の競合各社にも圧力をかけている。Teslaのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、今年1月の決算説明会でヒューマノイドロボット「Optimus」の手の技術について自社が先行していると主張する一方、中国を最も有力な競合相手に挙げた。製造拡大のスピードと生産能力の面で、中国は非常に強いとも評価した。
中国国内では、ヒューマノイドロボットは人を置き換えるのではなく、人が敬遠する業務を担う方向だと強調されている。ケネス・レンは「目標は、危険だったり、単調な反復作業だったり、人がやりたがらない仕事を任せることだ。人間そのものを代替するものではない」と述べた。
業界では、中国が技術開発に加え、学習データの蓄積、現場検証、大規模な量産体制の構築を同時に進めている点に注目が集まっている。今後の焦点は、人の補助に依存する現状をどこまで脱し、反復訓練で得たデータを生産性向上と自律作業能力の強化に結びつけられるかに移りそうだ。