欧州株式市場で、人工知能(AI)インフラ関連のテクノロジー株が急騰している。米中が主導してきたAI投資が、データセンターやネットワーク、半導体装置といった供給網全体に広がるなか、関連需要の恩恵を受ける銘柄に買いが集中している。
米CNBCが21日(現地時間)に報じたところによると、半導体装置を手掛けるAixtronは年初来で189%上昇した。Technoprobeは129%、STMicroelectronicsは133%、Nokiaも108%高と大幅に値を上げている。
今回の上昇は、大規模基盤モデルや最先端チップの開発企業だけでなく、AIインフラ整備を支える周辺企業にも投資家の関心が広がっていることを映す。市場では、電力や冷却、ソフトウェアツールを含む幅広い供給網のなかから、AI需要の恩恵を受けやすい企業を探る動きが強まっている。
JPモルガンのクロスアセット戦略責任者、ファビオ・バッシ氏は、欧州では「銘柄の希少性」が上昇を押し上げていると指摘した。大きな流動性を持つ純粋なAI銘柄が限られるため、資金が少数のAI関連銘柄に集中しているという。欧州市場では、AI需要との結び付きが比較的明確な企業に買いが集まりやすい構図だ。
とりわけ上昇が目立つAixtronは、シリコンウエハー上に超薄膜材料を形成する成膜装置を手掛けるドイツ企業だ。株価は直近12カ月で300%超上昇した。
Citiは4月のリポートで、需要拡大と採算改善を理由にAixtronの目標株価を66%以上引き上げた。2026年の業績見通しでは、AIを主要な増収要因の一つに挙げている。
STMicroelectronicsも、AIインフラ拡大の恩恵を受ける銘柄として注目されている。Morningstarのシニア株式アナリスト、ブライアン・コレロ氏は「AI向け設備投資の拡大で、さまざまな半導体の需要が増えている。STMicroelectronicsを含む業界全体にとって追い風だ」と話した。
同氏によると、STMicroelectronicsは800ボルトの電力変換に使うパワー半導体に加え、データセンターの高速接続向け光学製品でもAI需要の恩恵を受けるという。
Nokiaは、事業の軸足を携帯電話からAIインフラ向けハードウエアへ移しつつある。AIデータセンター向けのネットワーク機器や光通信機器を供給している。
同社は昨年、Infineraの買収を完了し、光ネットワーク装置分野で世界有数の企業群に加わった。NVIDIAが昨年10月、Nokia株を10億ドル(約1500億円)分取得すると明らかにした際には、株価が一時22%上昇した。
イタリアのTechnoprobeは、シリコンウエハー検査に使うプローブカードのメーカーだ。Bank of Americaは5月、GPU需要に連動した業績成長を見込み、同社株の投資判断を「買い」に引き上げた。
業種指数もこうした動きを裏付けている。ストックス・ヨーロッパ・トータル・マーケット半導体指数は年初来84%上昇し、同期間に3%高だったストックス600を大きく上回った。
もっとも、市場では今回の上昇を欧州AI産業全体の本格反転とみる見方は限定的だ。Morningstarの株式アナリスト、マーティン・シュムスキ氏は、欧州でもAIインフラ支援への関心は高まっており、Nokiaがその一翼を担う可能性はあるとしつつ、制度環境は米国と大きく異なると指摘する。
同氏は、電力網の制約、データセンター建設の中断措置、EU AI法への対応負担が、欧州でAIインフラを拡大する際の障害になるとみている。さらに、米国のように電力と水を十分に確保できる500エーカー超の用地を見つけられる地域は多くないとも述べた。当面の勝ち組は、引き続き米国市場向けに製品を供給する企業になるとの見方だ。
今後は、インフラ供給企業にとどまらず、実際にAIを導入する企業にも恩恵が広がる可能性がある。コレロ氏は、ソフトウエア、フィンテック、ヘルスケア、ロボティクス分野を次の有力候補に挙げた。各国が自国言語に対応したAI導入を進めるなか、地域ごとの勝ち組が生まれる可能性があるとしている。
ただ、バッシ氏は、足元の急騰を「欧州テクノロジー全体の復興」と受け止めるべきではないとくぎを刺す。現在の相場は、データセンター拡張への明確なエクスポージャーを持ち、その需要を収益につなげられる一部企業に資金が集中する局面であり、恩恵が及ぶ範囲はなお限定的だという。