中国のGanfeng Lithiumは、エネルギー密度500Wh/kg級のリチウムメタル全固体電池で少量生産を開始した。全固体電池の開発競争が研究・素材開発の段階から、生産立ち上げと量産準備の局面に移りつつあることを示す動きと受け止められている。
EV専門メディアのElectrekによると、同社は21日(現地時間)、投資家向け資料を通じて10Ahのリチウムメタル全固体電池セルの生産開始を明らかにした。対象製品については、世界初の技術だと位置付けている。
Ganfeng Lithiumは中国最大のリチウム化合物メーカーで、リチウムメタル材料市場では世界で約45%、中国国内で約70%のシェアを握る。Tesla、現代自動車、BMW、Volkswagenなど大手自動車メーカーに電池材料を供給しており、現代自動車とは水酸化リチウムの4年間の供給契約を結んでいる。
今回の発表で注目されるのは、全固体電池の開発が研究・素材開発の段階を超え、生産フェーズに入り始めた点だ。同社は全固体電池をシリコン系負極とリチウムメタル負極の二本立てで開発しており、今回の500Wh/kg級製品はリチウムメタル負極ベースのセルに当たる。
一方、シリコン系全固体電池については、エネルギー密度約400Wh/kg、充放電寿命1100回超を確保し、量産準備を完了したと説明した。
同社はこのほど、中国の全固体電池イノベーション・発展サミットでも主要技術の成果を公表した。ゼロストレイン(Zero-strain)型のリチウム合金負極と硫黄系正極の技術を開発し、電気化学的安定性と熱安定性を高めるとともに、不要なリチウムの移動を抑えられるとしている。
安全性と耐久性に関するデータも示した。リチウム合金負極の膨張率は充放電時でも3〜5%に抑えられ、くぎ刺し試験と高温加熱試験を通過したという。最大250度Cの熱安定性も確保したと強調した。
同社は、これらの技術が高エネルギー密度の全固体電池の産業化を加速させるとの見方を示した。
市場では今回の動きを、全固体電池の実用化時期を前倒しする可能性がある材料とみている。Ganfeng Lithiumはすでに東風汽車や長安汽車など中国の自動車メーカーと協力関係を築いており、材料メーカーがセル生産まで事業領域を広げることで、EV向け電池のサプライチェーン構造に変化を促す可能性もある。
全固体電池を巡る競争は中国にとどまらない。BYD、CATL、Volkswagen、トヨタ、Mercedes-Benzなど主要な自動車・電池メーカーは、2027〜2028年ごろの少量生産を目標に掲げており、本格量産は2030年代以降になる見通しだ。こうした中、Ganfeng Lithiumの生産開始は、技術開発のスピードという面で重要な節目と評価されている。
もっとも、全固体電池が次世代電池の標準として一本化されるとの見方はなお限定的だ。リン酸鉄リチウム(LFP)電池やナトリウムイオン電池なども、コスト、安全性、寿命の面で競争力を保ちながら進化を続けているためだ。
業界では今後、EV向け電池市場は航続距離、コスト、充電速度、安全性を軸に、複数の技術が併存する方向へ再編が進むとみられている。