米投資家のマーク・キューバン氏は、保有していたビットコインの大半を売却したと明らかにした。ドル安や中東情勢の緊張が続く局面でも、ビットコインがインフレヘッジとして期待した値動きを示さなかったことが理由だという。
暗号資産メディア「CoinPost」が22日(現地時間)に伝えたところによると、キューバン氏はポッドキャストで、現在の市場環境ではビットコインが想定していた役割を果たしていないと述べ、保有比率を大きく引き下げたと説明した。
同氏はかつて、暗号資産ポートフォリオの60%をビットコインが占めていたとしている。
売却の判断材料として挙げたのが、足元のマクロ環境での値動きだ。米ドル安や中東情勢の緊張が強まる中でも、ビットコインはインフレヘッジ資産として機能しなかったとの見方を示した。金価格が1オンス当たり5000ドルまで上昇した一方で、ビットコインはむしろ下落した点に失望したと語った。
今回の発言は、同氏が過去に示してきた見解とは対照的だ。キューバン氏は2021年のインタビューで、発行上限のあるビットコインは金より優れた価値保存手段になり得ると主張。当時は一度も売却していないとし、長期保有の方針を強調していた。
今回の売却は、ビットコインが「デジタルゴールド」として機能するのかを巡る市場の議論とも重なる。市場では、マクロ不安の局面で防衛的な資産として買われるのか、それとも他のリスク資産と同様の値動きにとどまるのかが引き続き論点となっている。キューバン氏は最近の相場展開を踏まえ、ビットコインは期待していたヘッジ手段にはならなかったと判断したようだ。
一方で、同氏はイーサリアムや他の暗号資産プロジェクトについては、ビットコインほど失望していないと述べた。イーサリアムに関しては、スマートコントラクトや分散型金融(DeFi)といった実利用の面で独自の価値を維持していると評価した。
ビットコインのインフレヘッジ機能への懐疑が強まる半面、各種アプリケーションを支えるインフラ型ブロックチェーンには、別の成長資産としての評価もある。キューバン氏も、ビットコインへの期待は後退させつつ、スマートコントラクト基盤のネットワークが持つ実用性は引き続き認めた格好だ。
暗号資産市場の成熟に伴い、投資家の評価基準も厳しくなっている。かつては技術的な象徴性や希少性が注目を集める場面もあったが、足元では市場での実績や他資産と比べた優位性まで問われるようになっている。
著名投資家であるキューバン氏が、ビットコインの長期保有姿勢を後退させたことは、市場に一定の示唆を与えそうだ。ただ、同氏はビットコインそのものを全面的に否定したわけではなく、足元のマクロ環境におけるヘッジ機能に失望したと説明している。今後も市場では、ビットコインを価値保存手段とみるべきか、リスク資産として捉えるべきかを巡る議論が続きそうだ。